e-mailコミュニケーション:術前説明 ・・・はたして満足行く結果であったか?

インターネットなどの方法を褒めそやすこと・・・聞き飽きたという個人的感想を最近持っている。

e-mailによる情報提示に関して、medpage(http://www.medpagetoday.com/Surgery/GeneralSurgery/tb/8403)などメディアは肯定的紹介がなされている
患者からの電話での応答がなくなることで
・診療ルーチンの阻害が無くなる
・’phone tag'(電話相手不応)対策で終日業務に支障が無くなる
というメリット

E-mailによる応答は、途中妨害のない書込ができ、応答に対する適切な思考時間が確保でき、構文として適切で正確な返事を書くことができ、時に電話では急いでしまう返答も確実に行いやすくなる

ファイルにe-mailのコピーを保存することで論争の応答の証拠を保持できることになり、貴重なリソースが法廷論争に影響を与える。

e-mail コミュニケーションを用い、多くを質問し、対面コンサルテーションで阻害された個人的問題を指摘することができる。


あくまで、電話を利用されるくらいならe-mailがまし・・・という話になると思うのだが・・・この解説では
患者側からの立場で言えば、術前コンサルテーションを否定的局面無しに、有意に患者コミュニケーションのレベルを上げることができるが示された。この研究は、前向きランダム化臨床トライアルの形をとっており、e-mailアクセスを受けた患者は有意に術前interactionのレベルが増加し、満足アウトカムは減少しなかった。
としている。


Primary source: Archives of Surgery
Source reference:
Stalberg P, et al "E-mail access and improved communication between patient and surgeon" Arch Surg 2008; 143: 164-169.
【デザイン】前向きランダム研究
【セッティング】三次紹介病院
【患者】100名の連続患者で、甲状腺・副甲状腺手術前のコンサルテーションを受ける患者
【介入】コミュニケーション手段としてe-mail communicaionの情報シートを受けるか(group E)、標準の情報シートをもらうか (group S)に分ける
【メインアウトカム測定】
(1) Use of communication with the surgeon outside of the booked preoperative and postoperative consultation
(2) satisfaction questionnaire.
【結果】
26/100(26%)で追加的周術的コミュニケーションを開始
group Eは19/50(38%)、group Sは7/50(P < .001)

コミュニケーション開始のうち、22/26(84%)はe-mailのみ
3(12%)はファックス、1(4%)が電話

e-mail使用の患者の内、18/22(81%)がgroup Eで、4/22がgroup S(P<.02)

包括的に、34のe-mailを22名の患者に送ったこととなる

多くのe-mailは1つの問題でのみの応答であったが、一つのe-mailで4つ以上の問題を有したものもあった。

アウトカム測定において、コミュニケーション満足に関連した差異はなかった



通常の"e-mail”の問題点はなりすましが簡単なこと、秘匿性が保たれないことなどである。
専門医にとってはFAQなどを整理しておけば返事が簡単であり、三次医療機関などでは比較的容易なのではないだろうか?このe-mailコミュニケーション・・・個別多様性がありすぎるわたしら開業医には限定的な意味合いしかないだろうし、医療保険上も問題ありそう
愛知の開業医、ピルをネット販売 医師法違反の疑い 中日新聞:2008年1月21日 夕刊
愛知県丹羽郡で婦人科や泌尿器科などを専門に開業しているクリニックが、インターネットで低用量ピル(経口避妊薬)を販売していることが分かった。
"電子メールでのやりとりが診察と認められない場合、薬事法が禁じる無許可販売に問われる可能性”だけでなく説明義務を果たしていないと問われかねないと思う。


この論文が一人歩きしないように、患者満足度を含む主要アウトカムの改善が示されてない論文ということを個人的には強調しておきたい。

Additional source: Archives of Surgery
Source reference:
Mulder DS, "Invited critique" Arch Surg 2008; 143: 168-169.

by internalmedicine | 2008-02-19 09:44 | 医学  

<< State-of-the-Sc... スタチンは心房細動二次予防に有効 >>