CADASILにおけるアリセプトの効果
2008年 02月 23日
微妙なLancet誌のコメント付き報告
コリン作動欠乏状態が血管性に起因する認知症に関わる可能性があり、血管性痴呆に対してコリンエステラーゼ阻害剤のトライアルがなされようとするが、heterogenousな疾患故困難。皮質下梗塞や白質症(CADASIL)は常染色体優性動脈疾患である。
CADASILの早期発症故、比較的homogenousであろうということで、この疾患を対象に他施設18週プラセボ対照二重盲検ランダム化平行群トライアル施行。
Donepezil in patients with subcortical vascular cognitive impairment: a randomised double-blind trial in CADASIL
The Lancet Neurology Early Online Publication, 22 Febuary 2008
【研究方法】MMSEスコア10-27もしくは trail making test (TMT) B time scoreが1.5SD未満(年齢・教育レベル補正後)
プライマリエンドポイント:18週後の基礎値からのvascular AD assessment scale cognitive subscale (V-ADAS-cog) 変化
セカンダリエンドポイント:ADAS-cog、MMSE、TMA A timeとB time、Stroop、executive interview-25 (EXIT25)、 CLOX、 disability assessment for dementia、 sum of boxes of the clinical dementia rating scale
ITT解析がなされた
【結果】161名の患者分析。エンドポイントで、donepezil(n=84)とプラセボ(n=77)
基礎スコアとの最小自乗平均変化はプラセボ-0.81(SE 0.59)、donepezil群で-0.85(p=0.956)
セカンダリアウトカムフォローにてdonepezilが有意に良好であった
TMT B time (p=0·023)
TMT A time (p=0·015)
EXIT25 (p=0·022)
10名のdonepezil治療群が副作用のため 治療中断
非アルツハイマー型痴呆には、レビー小体型痴呆(DLB)、前頭側頭型痴呆、皮質基底核変性症など鑑別必要だが、血管性がらみの疾患が問題になる
家族性偏頭痛
CADASIL(cerebral arteriopathy, autosomal dominant, with subcortical infarcts and leukoencephalopathy, MIM 125310):若年で発症し,動脈硬化のリスクファクターが乏しいにもかかわらず,皮質下梗塞や白質病変が進行する優性遺伝性疾患である.仮性球麻痺や痴呆などの脳血管障害による症状に加え,患者の約20~40%に前兆を伴う頭痛が存在し,時に初発症状であることもある.19q12に存在する NOTCH3(MIM 600276)が原因遺伝子として同定されている.(MINDS)小・細動脈における中膜平滑筋の変性が特徴的で,中膜にPAS陽性の顆粒状物質が沈着する。この物質は電顕的には電子密度の高い10~15nmの微細顆粒が集積したものであり,granular osmiophilic materials(GOM)と呼ばれる。免疫組織化学的検討から,GOMの近傍にはNotch3蛋白の細胞外ドメインが異常な凝集を形成していると推定されている。(http://www.bitway.ne.jp/ejournal/so-net/1431100276.html)
MELAS(mitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes, MIM 540000):繰り返す嘔吐,頭痛,痙攣,脳卒中様発作を特徴とするミトコンドリア病の一病型である.MELAS患者の80%はミトコンドリア遺伝子に存在するMTTL1(Transfer RNA, mitochondorial, leucine, 1)遺伝子(MIM *590050)のA 3243 G変異により発症する.(MINDS
家族性片麻痺性片頭痛1型(MIM 141500)/2型(MIM 602481)
Osler-Rendu-Weber 症候群(遺伝性出血性毛細血管拡張症)(MIM #187300, #600376)
CARASIL(Maeda syndrome)
脳の小・細動脈に線維性内膜肥厚,中膜硝子化,内弾性板断裂などの動脈硬化性変化を認め,これらの病変に基づき大脳白質優位に多発性脳梗塞を生じる常染色体劣性遺伝性動脈疾患である。若年性禿頭や脊椎の変形などの特異な中枢神経外症状を伴い,granular osmiophilic materials(GOM)は認められない。(http://www.bitway.ne.jp/ejournal/so-net/1431100276.html)
CARASIL”は30代に脳血管性痴呆を呈するが,病理学的に脳の細小血管を主体とした動脈硬化を示すため,一般の高齢者における脳の動脈硬化に極めて近い病態と考えられる
by internalmedicine | 2008-02-23 08:28 | 精神・認知