重症敗血症ショックに対するvasopressin vs ノルエピネフリン・・・死亡率改善効果明確でない

多施設トライアルにおいて、778名の敗血症性ショック患者に対するオープン薬剤に追加する、ノルエピネフリンとvasopressin割り当てを比較
2群間に28日、90日での死亡率の差がなく、副作用イベントの有意差もない。ただ、軽症群と思われる例ではvasopressinは有効なようである



前置きからだが・・・
敗血症性ショックに関して死亡率は40%-60%であり、輸液蘇生とカテコラミン(ノルエピネフリン、エピネフリン、ドーパミン、ドブタミン)使用がなされる。臓器潅流維持のための平均血圧を最小限でも維持する必要性があると考えられているが、副作用と死亡率増加が一部報告されている。たとえばノルエピネフリンはαアドレナリン作動剤として、潅流圧は適正化するが、心拍出量、酸素運搬、血流を減少させるという話がある。vasopressinは、内因性に本来遊離されるホルモンであり、血管緊張と血圧改善に働くということで使われ始めている。
(・・・毎度のごとく、日本では健保適用放置だが・・・ピトレシン注


Vasopressin versus Norepinephrine Infusion in Patients with Septic Shock
N Engl J Med. vol. 358;877-887 Feb. 28 2008
【方法】他施設ランダム化二重盲検トライアルで、敗血症ショックで、ノルエピネフリン 5μg/minを受けている患者で、低用量vaspressin(0.01-0.03 U/分) or ノルエピネフリン(5-15μg/分)をオープンラベルの昇圧剤に加えた
昇圧剤点滴はプロトコールに従い、補正し、中止する。
プライマリエンドポイントは28日での死亡率
【結果】
778名をランダム化、vasopressin割り当て396、ノルエピネフリン割り当て 382
vasopressinとノルエピネフリン群で死亡率有意差無し (35.4% と 39.3%, respectively; P=0.26)、90日でも有意差無し(43.9% と49.6%; P=0.11)
重篤な副作用包括でも有意差なし (10.3% と 10.5%; P=1.00)


前向きの重症度の低い状態との層別群では、28日死亡率はvasopressin群の方が、ノルエピネフリン群より低い(26.5% vs. 35.7%, P=0.05)
より重症の層別群では、28日死亡率の差はない(44.0% と 42.5%; P=0.76)
この群間heterogeneity試験は有意でなかった (P=0.10)



プロトコール内のショック関連の定義

SIRクライテリア

・高体温:>38℃
・低体温:<36℃
・頻拍:心泊>90/分
・多呼吸:呼吸回数>20/分 or PaCO2 < 32 mmHg or 人工呼吸補助必要
・異常白血球数(>12000/mm3、<4000、 10%> の未熟(棹球)白血球)


感染(known, suspencted):
臨床的に疑われることで定義(微生物的培養所見陽性、調査中、抗生剤使用中)


低血圧:
収縮期血圧(SBP)<90 mm Hg or CVP 12mm Hg維持するため1時間以上血圧が40mm Hg超低下がある場合 or 血圧維持のため500mLの生食投与もしくは昇圧剤投与必要な場合


昇圧剤必要量:
ノルエピネフリン当価投与量 : [norepinephrine(μg/min)] + [dopamine (μg/kg/min) ÷ 2] + [epinephrine (μg/min)] + [phenylephrine (μg/min) ÷10]
事前24時間後の6時間でノルエピネフリン≥ 5 μg/min 同等以上必要な患者にてランダム化したこととなる。


新規臓器障害:
呼吸 (ventilated and PaO2/FiO2 < 300 mmHg)
腎臓(urine output < 30 mL/hour or less than 0.5 mL/kg body weight, for at least one hour)
凝固 (platelet count < 80,000/mm3)
中枢神経 (Glasgow Coma Score < 12, prior to receiving sedation)






バゾプレッシンの血管平滑筋細胞のKATPチャネル活性抑制効果は乳酸アシドーシスで逆に増強するというメカニズムに対する期待(pdf
バゾプレッシンは9個のアミノ酸さらなるペプチドホルモンであり、視床下部の視索上核と室傍核で合成されて脳下垂体後葉から放出される。バゾプレッシン受容体には、V1a、V1b、V2 の3 種類が知られている.主な生理作用としては、V1a 受容体を介した血管平滑筋収縮による血圧上昇作用、V2 受容体を介した腎臓での抗利尿作用、そしてV1b 受容体を介した脳下垂体前葉からのACTH 分泌刺激作用が挙げられる。


ショックによる乳酸アシドーシス→血管平滑筋のKATP チャネル活性化→間接的に電位依存性Ca チャネル不活性化→Ca 細胞内流入阻害→カテコラミン血管収縮刺激抵抗性の治療抵抗性の血管拡張持続

by internalmedicine | 2008-02-28 09:09 | 医療一般  

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