ビタミンサプリメントは肺がんリスクを減少するどころか増やす可能性がある

「たばこが直接ビタミンCを壊すので、喫煙者はビタミンなどの補給が重要だ」というたぐいの宣伝文句を聞いたことがないだろうか?あのうわさの源が禁煙を勧める本からもたらされている?あるいは噂の流布の源になっていて困ったものだと思ったことがある。

「たばこはビタミンCを壊すので、サプリメント補給が必要である」・・・という宣伝を聞くがビタミンCを壊すという根拠は乏しい。喫煙者でのアスコルビン酸濃度が低いという多くの報告はあるが、喫煙者の生活習慣者はビタミンC摂取量が少ないという報告Ann N Y Acad Sci 1993;686:347-58. )が主な影響因子であり、他、摂取量記載ミスや、ビタミンCのbioavailabilty、吸収条件、ストレス、ビタミンを含む消化過程やstorage timeが影響を及ぼす( Nutr J. 2007 Nov 13;6:41. )。


ノバルティスの配付資料にあった“たばこはビタミンCを壊す”という表現はあまりに乱暴と思い、原著を出版先に問い合わせたが、当製薬会社からの回答は原典はっきりせずというものであった。

なぜ、この表現に私がこだわったかというと、その後のビタミンEを主体とする有害事象がたびたび報告され続けたこともあり、安易にビタミンサプリメント補給にたよる風潮を助長することに危惧を抱いたからである。

抗酸化サプリメントは寿命を短くする  2007-02-28 10:13
NIHコンセンサスステートメント: マルチビタミン・ミネラルサプリメント(MVM) | 2006-08-01 10:38 


あらたな、ビタミン・サプリメントの有害事象の報告が加わった。

ビタミンサプリメントは肺がんリスクをへらすどころか、増やす可能性がある。
特に現行喫煙者は・・・注意が必要である。


Long-Term Use of Supplemental Multivitamins, Vitamin C, Vitamin E, and Folate Does Not Reduce the Risk of Lung Cancer
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine Vol 177. pp. 524-530, (2008)
77721名の男女(50-76歳)の前向きコホートで、VITAL (VITamins And Lifestyle) study
症例はSeattle–Puget Sound SEER (Surveillance, Epidemiology, and End Results) cancer registryを用いたもの
【結果】10年平均ビタミンC、ビタミンE、葉酸を使用
521例の肺がん同定
喫煙、年齢、性を補正したところ、サプリメントに逆相関認めず
サプリメントビタミンEは肺がんリスクを若干増加する(HR, 1.05 :各100-mg/d 増加に対し; 95% 信頼区間 [CI], 1.00–1.09; P = 0.033)
ビタミンEのリスクは現行喫煙者に特に限定されたものである (HR, 1.11 :各100-mg/d 増加に対し; 95% 信頼区間 [CI], 1.03–1.19; P < 0.01)
そして、非小細胞癌に特に限定されたものである(HR, 1.07 f:各100-mg/d 増加に対し; 95% 信頼区間 [CI], 1.02–1.12; P = 0.004).




喫煙者vs非喫煙者、愛煙家vs嫌煙家・・・・の感情をベースとするの戦いが、禁煙指導にまで入り込んでしまっている現状。
悲しいことに禁煙指導のリーダーたちの記述物が必ずしも科学的でないことため、反禁煙運動者たちに揚げ足をとられてしまうことが多い。その幼稚な表現が、似非禁煙グッズ+ビタミンサプリメントなどの販売促進につかわれてしまう・・・

by internalmedicine | 2008-03-03 09:31 | 呼吸器系  

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