誤嚥・・・飲料と体位の工夫
2008年 04月 01日
"chin-down posture”+果汁の濃さの飲料が予防的に誤嚥を防止できるか・・・今後の課題
Comparison of 2 Interventions for Liquid Aspiration on Pneumonia Incidence
A Randomized Trial
Ann Int Med. Vol. 148(7) 509-518 Apr 2008
1998年6月9日から2005年9月19日までの3ヶ月間のランダム化対照、平行デザイントライアル
47病院と79亜急性期施設で、515名の50歳以上の認知症・パーキンソン病患者で、薄い飲料(thin liquid)誤嚥(ビデオ透視検査で証明)のあるもの
504名を3ヶ月もしくは死亡までフォロー
介入としては、ランダムに顎を引いたポジション(chin-down posture)(n=25)、果汁の濃さ(nectar-thick)(n=133)、ハチミツの濃さ(honey-thick)(n=123)の液体に割り当て
プライマリ・アウトカムはレントゲン診断肺炎か、3つの呼吸器症状の存在
肺炎は52名で生じ、3ヶ月累積頻度は11%
肺炎の累積頻度は、chin-down posture 0.098、濃厚液体群は0.116(ハザード比 0.84 [95% CI, 0.49 - 1.45]; P = 0.53)
honey-thick liquid群 0.084とくらべ、nectar-thick liquid群 0.150は累積頻度が少ない(hazard ratio, 0.50 [CI, 0.23 - 1.09]; P = 0.083)。
濃厚な飲料割り当て群患者はchin-down posture介入より脱水(6% vs. 2%)、尿路感染(6% vs. 3%)、発熱(4% vs. 2%)を生じやすい。
Aspiration Pneumonia and Dysphagia in the Elderly
Ches 2003;124;328-336 < pdf >
臨床的・手段的評価によりマネージメントプランは発展した。食事・嚥下効率向上のための、誤嚥リスク減少のための補完的戦略が、食物・飲料の工夫、量の工夫、bolus presentationの工夫など・・・。食事の修正は、マネージメントアプローチとしてもっとも行われているもので、
濃厚、希薄、半固形などがその能力により変更される。
患者の食物の内容は臨床的状況により個別化されるべきで、老人の脱水はナーシングホームや長期滞在施設での重要な課題の一つであり、水分の補正の留意が必要。
濃厚な水分のコンプライアンスは減少することも注意が必要である。
口腔内衛生状態の良い患者では冷水の一口がのどの渇きを癒し、脱水改善にも役立つことがある。
"chin-down posture"
Shanahan TK, Logemann JA, Rademaker AW, Pauloski BR, Kahrilas PJ. Chin-down posture effect on aspiration in dysphagic patients. Arch Phys Med Rehabil 1993;74:736-9.
この問題は、高齢者医療に携わると重大な問題と実感する。
AAFPによると、
Dietary Modification
・濃厚・希釈飲料の使い分け、脱水補正注意、たまにはプリンのようなものが有効なことも
・多くの患者は肉や固いものを飲み込めない。故に、柔らかいものを自動的に要求するようになる。逆に、"ポケット”フードにも注意を!
Swallow Therapy
・3つに分けられる
compensatory techniques (i.e., postural maneuvers)
indirect therapy (exercises to strengthen swallowing muscles)
direct therapy (exercises to perform while swallowing)
Other Treatments
・手術: cricopharyngeal myotomy
・口腔咽頭バイパスするための外部栄養
腸管栄養は、口から栄養や水分がとれない場合適用
だが、誤嚥があるからといって必ずしも腸管栄養が必要というわけではない。
食事の工夫と、代替手技にて多くの患者は、食事・水分をとることができるようになる例も多い。
意識レベルの低下した患者、誤嚥大量の場合、"silent aspiration”、食道閉塞、繰り返す気道感染の場合は必要である。
PEGが長期管理のため用いられるが、GERDリスクの増加、誤嚥性肺炎のリスクを増加させる。点滴投与は効果だが、誤嚥性肺炎の患者では適切といえる。
by internalmedicine | 2008-04-01 11:31 | 精神・認知