80歳超の高齢者降圧治療 (HYVET):有効性の証明
2008年 04月 02日
115/75mmHgからの卒中への関係は年齢とともに減衰するという報告、血圧と死亡リスクは80歳以上で逆比例するという疫学的報告(日本のコレステロール:J-LIT問題のような話で、癌・認知症・心筋梗塞・心不全の関与が考えられる)*などがあり、事態を混乱させていた。そのため、治験対象を80歳以上を除外されることも多かった。後顧的研究では、血圧140mm Hg/-未満では生存率低下の報告( J Am Geriatr Soc 2007;55:383-388. )もある
*Br Med J (Clin Res Ed) 1988;296:887-889.
Hypertension 1993;22:551-559.
J Am Geriatr Soc 2006;54:912-918.
J Am Soc Nephrol 2006;17:2561-2566.
J Am Geriatr Soc 2001;49:367-374.
Treatment of Hypertension in Patients 80 Years of Age or Older
www.nejm.org March 31, 2008 (10.1056/NEJMoa0801369)
この年齢層に特異的な高血圧治療に関する結果のメタ解析にて卒中リスク36%減少し、副作用として全原因死亡14%増加させたという報告(Lancet 1999;353:793-796. )があり、さらに昏迷を深めていた。
今回のHypertension in the Very Elderly Trial (HYVET)は、一定のポジティブな効果を示したという意味で画期的である。
この治験は効果がはっきりしすぎて途中で治験中断判断が下されている(http://www.news-medical.net/?id=28545)
80歳以上のヨーロッパ、中国、オーストラリア、チュニジアの患者3845名への割り当て
徐放性の利尿剤indapamide(徐放 1.5mg)とプラセボ
血圧150/80 mm Hgをターゲットにして、もし必要ならperindopril(2 or 4mg)かマッチングプラセボ投与
積極的治療群(1933)とプラセボ群(1912)は良くマッチされていて、平均83.6歳、平均血圧173.0/90.8 mmHg、心血管疾患病歴 11.8%
フォロー期間中央値1.8年
2年時点で平均血圧、15.0/6.1mm Hg積極的治療群でプラセボより低い
ITT解析にて、積極的治療は致死的・非致死的脳卒中減少30%(95%CI -1 ~ 51; P=0.06)、卒中死亡減少39%(1-62; P=0.05)、全原因死亡減少21%(95%CI 4-35;P=0.02)、心血管死亡率減少23%(95%CI -1 - 40 P=0.05)、心不全率64%減少(42-78;P<0.002)
重症副事象は積極的治療群で少ない (358, vs. 448 プラセボ, p; P=0.001)
財務省・厚労省・自民党・公明党・経団連主導の老人虐殺計画に反する知見が得られたわけだが・・・
by internalmedicine | 2008-04-02 14:32 | 動脈硬化/循環器