アルツハイマー病・MCI:うつであることがその発症と直接関係しない
2008年 04月 08日
Change in Depressive Symptoms During the Prodromal Phase of Alzheimer Disease
Arch Gen Psychiatry. 2008;65(4):439-445.
解説記事:Symptoms of depression do not appear to increase in early stages of Alzheimer's disease
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2008-04/jaaj-sod040308.php
うつ患者がアルツハイマー病発症に対して尤度が高いが、うつ症状は診断前数年間で、増加しているかは不明だったが、今回の報告で、うつは必ずしもアルツハイマー病発症につながるものではないということが分かった。しかし、認知症のリスク要因であることは確か。
以前の報告から、アルツハイマー病やMCI患者でのうつの高度症状(悲壮感など)が高頻度認められ、相関の根拠は不明瞭であった。
うつ症状がリスク要因として寄与せず、アルツハイマー病の初期にうつ症状が現れやすいのであるという以前からの仮説があった。
1994年、認知症のない917名の高齢者で、神経学的検査、認知機能試験(thinking, learning と memory)、アルツハイマー病・MCI分類を行い、うつ症状評価の10アイテムスケールを行った。
研究開始時、53.5%がうつなし、23.9%が一つ、9.7%が2つ、6.1%が3つ、6.8%が4つ以上。190名のアルツハイマー病発症。
アルツハイマー病発症した患者では診断前にうつ症状が増加しているという減少はなかった。このことは年齢、性、教育、記憶症状、血管疾患・パーソナリティーなどでも影響を受けなかった。
ベースラインでMCIがない対象者でも、うつ症状の存在が必ずしもMCI発症尤度増加と関係しない。
認知症の初期症状のひとつは、うつ症状であることは確か。"純粋な”うつと、アルツハイマー病の初期症状としてのうつは違う病態であり、メカニズムも異なる可能性がある。故に、認知症患者のうつ症状のメカニズムの理解は、認知症発症を遅延させる治療法が生まれるかも知れない。慢性ストレス状態の影響が動物モデルでは示唆されているから・・・というお話
by internalmedicine | 2008-04-08 11:09 | 精神・認知