患者・医師関係とプラセボ効果は量依存的関係

“プラセボ効果”というと、偽薬効果と訳され、その間に含まれる医師患者関係が無視されることがある。医師患者関係がどの程度影響をあたえているかは実は不明であった。

過敏性腸症候群(IBS)において、患者・医師関係とプラセボ効果は量依存的関係であることが判明した。


プラセボの効果を検討する場合は、その研究デザインですべてが決まる

1群 (waiting list) :観察のみ
2群(limited) :ダミー治療
3群(augmented) :警告、共感、信頼性にもとづいた関連を形成しようとする群
に分け、プロトコールを形成

Components of placebo effect: randomised controlled trial in patients with irritable bowel syndrome
BMJ 2008;0(2008):bmj.39524.439618.25v1 (3 April), doi:10.1136/bmj.39524.439618.25
目的:プラセボ効果は実験的に3つの構成成分の反応、評価・観察・治療様式(プラセボ治療)の反応に分けられる。
支持的患者・医療者関係と、IBS患者の漸増的改善効果とともにその関係は密接なものとなる

デザイン:6週単盲検3群ランダム化対照トライアル

セッティング:学術医療センター

参加者:262名成人(76%女性)、平均年齢(SD) 39(14)歳
Rome IIクライテリア ≥150

介入:3週間
・waiting list (observation)
・placebo acupuncture alone ("limited")
・placebo acupuncture with a patient-practitioner relationship augmented by warmth, attention, and confidence ("augmented")


3週間後、半数をオリジナルの治療割り当て群で継続

主要アウトカム測定:全般改善スケール(range 1-7)、症状改善、症状重症度、QOL

結果:3週後、全般改善スケールのスコアは、waiting list、"limited" vs "augmented"群で、3.8 (SD 1.0) v 4.3 (SD 1.4) v 5.0 (SD 1.3)(P<0.001 for trend).

適正レベルの改善報告比率も同様で、28%、44%、62%であった(P<0.001 for trend).

症状重症度スコアの反応も同様で、30(63) v 42(67) vs 82(89)(P<0.001)

quality of lifも同様 3.6 (8.1) v 4.1 (9.4) v 9.3 (14.0), P<0.001)

augmentedとlimited な患者・治療者の対比較はすべて有意であった。
・全般改善スケール (P<0.001)
・適正な症状度に改善 (P<0.001)
・症状重症度スコア (P=0.007)
・quality of life (P=0.01)


6ヶ月後フォローでも同様


結論:プラセボ寄与要因は要素成分の量依存的に効果に関与する。

非特異的効果が統計的に生じ、臨床的アウトカムと患者・医療者関係がもっとも重要な要素ということがあらためて判明された





患者医師関係はやはり薬物だけでない、別の価値がある・・・と、私は解釈したが・・・


外来管理加算のため、かなり影響をうけている。本来、濃厚な診療をしなければ十分な診療ができない患者や満足しない患者のため5分どころか・・・とんでもない時間を消費することがある。それを無視した設定により需要・供給不均衡現象を生じている。
時間目安なら、その分のコスト配分があるべきだったが、それは無視。

単に、コストカッター主導で日本の医療制度はきめられた。

結果、現場で混乱を生じている。・・・経団連(=保険者代表)と厚労省役人(財務・与党に従うだけだから仕方ないのかもしれないが・・・)+抗弁しない日医の代表たち・・・

患者・医者関係のことに思いをはすことのないコストカッターたちと軽挙の対応をした関係者たち・・・かれらが医療崩壊をさらに進めた。

by internalmedicine | 2008-04-11 09:18 | 医療一般  

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