高齢者高血圧治療トライアル

高齢者の収縮期高血圧治療方針 2004-09-02では、
高齢者の収縮期血圧(SBP)140-159mmHgを対象に治療すべきかどうかのエビデンスはない
とされていた。

高齢者高血圧(MINDS)では、
高齢者高血圧を対象とした代表的な介入試験の概要を示した。収縮期血圧160mmHg以上を対象としているが、その治療前平均値は168~197mmHgであり、到達した収縮期血圧は大部分が140~150mmHg


80歳以上の収縮期血圧の高い老人を利尿剤indapamide±ACE阻害剤にて150/80 mm Hgを目標にしたトライアルで、致死的・非致死的卒中、心血管死亡のリスクの有意な低下をもたらし、結果的に、卒中死亡率、全原因死亡を減らした高齢者でも降圧治療はbeneficialであるという話 
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Treatment of Hypertension in Patients 80 Years of Age or Older
N Engl J Med. Vol. 358:(18)1887-1898 May 1, 2008

ヨーロッパ、中国、オーストラリア、チュニジアの80歳以上、収縮期欠合うt160 mmHg以上の3845名に対して
・利尿剤(徐放剤 1.5mg) or マッチングプラセボ使用
・ACE阻害剤 perindopril(2、4 mg)かマッチングプラセボ使用を150/80となるよう追加

主要エンドポイントは致死的・非致死的卒中

積極的治療群(1933名)とプラセボ群(1912名)はよくマッチされている
フォローアップ期間中央値は1.8年
2年時、積極治療群ではプラセボ群に比べて平均血圧は15.0/6.1 mm Hg低下

ITT分析にて、積極治療は30%致死的卒中・非致死的卒中を減少 (95% CI –1 ~ 51; P=0.06)
卒中死亡率39%減少 (95% CI, 1 ~o 62; P=0.05)
全原因死亡率は21%減少(95% CI, 4 ~ 35; P=0.02)
心血管死亡率23%減少(95% CI, -1~40; P=0.05)
心不全率64%減少(95% CI, 41-78; P<0.001)

重篤な副事象頻度はむしろ積極的治療群で少なかった (358, vs. 448 in the placebo group; P=0.001)


米国では利尿剤が第一選択薬のようだが、はたしてそれでよいのか?・・・MINDSなんて考察から意図的に利尿剤をはずしているようだし・・・
追加治療として、カルシウム拮抗剤が望ましいのか、ACE阻害剤が望ましいのか?・・・4年前はACE阻害剤の評価が低かったようだが・・・NEJM(Vol. 348:583-592 Feb. 13, 2003


政府・厚労省・財務省・経団連による老人いじめ進行中だが・・・高齢者高血圧も十分エビデンスがあり、卒中などの社会的インパクトのある疾患に対して有効なのである。・・・そのことを政治家も役人も思い起こしてほしい。
そして、合併症が生じるのはdefaultであり、その時に6000円で対処せよと・・・医療機関に迫るのは所詮無理な話・・・後期高齢者医療は負担のほうばかりだが、医療の質に関しての議論が無視されている。

by internalmedicine | 2008-05-01 10:13 | 動脈硬化/循環器

 

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