ビタミンB・葉酸でホモシステイン値は減らすが、臨床的イベントは減らさず

葉酸、ビタミンB類、その両者の食事サプリメントとCVDリスクの関係はまだ結論付けされてないが、臨床的イベント減少の有効性に関して否定的証拠が集まってきている。

ビタミンで心筋梗塞二次予防を悪化・・・ホモシステイン仮説の否定New England Journal of Medicine. 2004 June 24)などですでにこの問題取り上げていたのだが・・・

・・・にもかかわらず、サプリメントがあらゆる疾患を改善するような嘘情報が氾濫ている。由々しき事態が放置されていると私は思うのだが・・・“ビタミンは死亡リスクを増加させる”(CNN)というエビデンスある報道も全く日本のメディアは無視し続けている。

下記トライアル結果は以前からのランダムトライアルと一致しており、高リスク群のCVDリスク介入にビタミン・葉酸介入の効果を支持しないというもの


Albertらはランダム化、プラセボ対照化研究(Women's Antioxidant and Folic Acid Cardiovascular Study)を行い、ホモシステイン値減少したが、CVDイベント減少をビタミン投与群とプラセボにその差異を見いだせなかったと報告している

Effect of Folic Acid and B Vitamins on Risk of Cardiovascular Events and Total Mortality Among Women at High Risk for Cardiovascular Disease
A Randomized Trial
JAMA. 2008;299(17):2027-2036.
葉酸2.5mg、ビタミンB6 50mg、ビタミンB12 1mg合剤

主要アウトカムは、心筋梗塞、冠動脈再建術、CVD死亡率

プラセボ比較で、796名の女性でCVDイベント(積極群:406、プラセボ群 390)

積極的ビタミン投与群と、プラセボはCVD主要エンドポイントにて類似リスク
積極介入群 226.9/10 000 人年 vs プラセボ群219.2/10 000 人年 ; [RR], 1.03; 95% 信頼区間[CI], 0.90-1.19; P = .65)



同様に、二次アウトカムでも同様
心筋梗塞:積極介入群 34.5/10 000 人年 vs 39.5/10 000 人年; RR, 0.87; 95% CI, 0.63-1.22; P = .42)
卒中:41.9/10 000 人年 vs 36.8/10 000 人年; RR, 1.14; 95% CI, 0.82-1.57; P = .44)
CVD 死亡率 (50.3/10 000 人年 vs 49.6/10 000 人年; RR, 1.01; 95% CI, 0.76-1.35; P = .93)


血液サブ研究にて、人口動態平均血中ホモシステイン濃度は積極治療群はプラセボ群比較にて18.5%(95%CI 12.5%-24.1%; P<0.001)で、その値は 2.27 µmol/L (95% CI, 1.54-2.96 µmol/L)


ホモシステイン濃度と臨床的効果の乖離がエディトリアルで語られている。

1969年McCully提案にさかのぼる、メチオニンによる動脈血栓性疾患原因説・・・その後、酸化ストレス、血管内皮細胞障害、血管内皮機能障害、炎症論、血栓症、細胞増殖・・・などと基礎研究で、その仮説を補強し続けてきた。また、疫学上も横断的研究でその仮説を支持しつつけてきた。
実際的効果と関係なく、仮説が40年独り歩きしてきた・・・このアイロイニー




日本では動物実験や検査結果の改善まで“エビデンス”と称されることがあり、それの悪用?・乱用で、臨床的トライアルがなされてないのに”科学的エビデンスに基づいた”アンチエイジングなどが氾濫している。・・・実に嘆かわしい事態である。
上記例が出てくると、動脈硬化はやはり臨床的イベントで判断すべきであり、たとえばIMTやIVUSの指標でさえほんとに臨床的イベントを推定しているのだろうかという疑問が出てくるのである。

by internalmedicine | 2008-05-07 10:19 | 動脈硬化/循環器  

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