血中酸化LDLは、将来のメタボリックシンドローム発生と相関

“メタボリックシンドローム”って、いったい何をめざしているのだろう。
この論文では、“腹部肥満”、高血糖、高中性脂肪を含む概念として、“Adult Treatment Panel III of the National Cholesterol Education Program”に従った定義ということとされている。この概念がほんとに臨床的アウトカム(合併症、死亡率など)に独立した概念として影響を与え、予防効果があるのか?・・・はなはだ疑問なのだが、この概念の独り歩きが続いている。

5年年をとると12.9%増加するこの疾患群になるかどうか、酸化LDLが一つの指標となるらしい。
Association Between Circulating Oxidized Low-Density Lipoprotein and Incidence of the Metabolic Syndrome
JAMA. 2008;299(19):2287-2293.
【序文】 実験的データで、酸化LDLがメタボリックシンドロームと相関があるとのことであったが、この仮説はヒトでは検討されていない。

【目的】一般住民での、酸化LDLとメタボリックシンドロームの相関

【デザイン、セッティング、参加者】 The Coronary Artery Risk Development in Young Adults (CARDIA) study(住民ベース、前向き、観察研究)
1889名の1985-1986年登録時点で18-30歳の参加者
アフリカ系アメリカ人41%、女性56%
15年時点( (2000-2001年、33-45歳)、20年時点(2005-2006年)で検討

【主要測定項目】
酸化LDLとメタボリックシンドロームの頻度の長軸検討

【結果】15年時点までのフォローアップでメタボリックシンドローム無しの人たちの、20年時点でのフォローアップでのメタボリックシンドロームの比率は12.9%(243 of 1889)

酸化LDL5分位にて、5年後のメタボリックシンドロームの発生頻度オッズ比(年齢、性、人種、研究センター、喫煙、BMI、身体運動、LDLコレステロール補正)は、
第2・5分位(55.4-69.1)にて、2.1 (95% 信頼区間 [CI], 1.1-3.8)
第3・5分位(69.2-81.2)にて、2.4 (95% CI, 1.3-4.3)
第4・5分位(81.3-97.3)にて、2.8 (95% CI, 1.5-5.1)
第5・5分位(≥97.4 U/L)にて、3.5 (95% CI, 1.9-6.6)


メタボリックシンドローム2分割構成頻度は、酸化LDL最高vs最低5分位にて、
腹部肥満 2.1 (95% CI, 1.2-3.6)
高血糖 2.4 (95% CI, 1.5-3.8)
高TG 2.1 (95% CI, 1.1-4.0)


LDLコレステロールではメタボリックシンドロームの頻度と相関せず、酸化LDLを含む完全補正モデルの成分とも相関しない。


モノクローナル抗体を用いた酸化LDLだから、測定に金も相当かかりそうだが・・・
酸化LDLを下げる薬剤として、スタチン、エゼチミブの予防的投与・・・という話になるのだろうか?まさか、いまさら、抗酸化物質の治験はしないと思うが・・・

by internalmedicine | 2008-05-21 10:36 | 動脈硬化/循環器  

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