心房細動(NVAF):周術抗凝固管理
2008年 06月 03日
心房細動(AF)は動脈性血栓塞栓(TE)のリスク5-6倍、ワーファリンにより卒中リスクを68%(45-82%)軽減。AFの約3分の2で卒中の高度リスクがあり、その人たちはワーファリンで治療すべき状況にある。
侵襲的手技のときに安全性を考えワーファリンを一時的に中断することがある。
年間リスクにばらつきのあるAFの患者(0.5%-20%)に、一律の抗凝固療法標準化は困難である。さらに手技に関わる出血リスクも様々である。
いくつかの戦略が提案されており、単純に術前5日にワーファリン中止する方法から、unfractionated heparinや皮下LMWヘパリン(LMWH)投与のブリッジング治療まである。
高度リスク患者(特に、AFによるTE既往のある患者)、1週間以上の経口抗凝固剤の中断を要する場合などでは、2006年のACC/AHA・ESCコンセンサスガイドラインでは、unfractionated heparinとLMWH投与を静注・皮下投与推奨されている。ただ、この推奨の根拠となるデータは少なく、非弁膜症性AFのみ限定されているものでもないということで、不満が残るものである。
Periprocedural Anticoagulation Management of Patients With Nonvalvular Atrial Fibrillation
Mayo Clin Proc. 2008;83:639-645
345名のAF患者(平均±SD年齢, 74±9歳;33%女性)で386回の手術
ワーファリン投与は44の手術
周術ヘパリン投与は204の手術で施行
PE既往をもつ患者でヘパリン投与多い(43% vs 24%;P<0.001)。CHADS(鬱血性心不全、加齢、糖尿病、卒中)スコアが高い (2.2 vs 1.9; P=.06).
4例で6回のTE(卒中3例、ACS3例;TE率 1.1%; 95%信頼区間 0.0-2.1%)エピソード
9名の患者で10回の出血イベント(重大出血率、2.7%;95%CI 1.0%-4.4%)
死亡なし、出血、TE率とも抗凝固管理戦略により相違なし
Periprocedural Anticoagulation Management
施行4-7日前に周術期抗凝固治療マネージメント推奨のため受診
出血リスクの少ない、あるいは、物理的止血が容易な、歯科やマイナーな手術の外来患者では、ワーファリン抗凝固療法を下限であるINR 2.0まで低下
卒中リスクの少ないとされる例では、手術前に4-5日前にワーファリンを中止し、術後迅速に戻す。通常量にもどし、loading doseは行わない
ワーファリンを術前4-5日中止するときは、卒中の高度リスクである場合(入院させunfractianated heparin静注治療もしくは、外来で、治療下限いきまで低下させたLMWHのbridge治療を行うか)
Procedure-Specific Risk of Major Bleeding
低リスク (<1%)
外来歯科手技
白内障手術
他のマイナーな外来手技
高リスク (>3%)
Open-heart surgery
Abdominal vascular surgery
Neurosurgery
Major cancer surgery
Urologic procedures
【歯科・眼科への返書の一部】
外来低リスクに分類される手技(大出血リスク<1%)においては
ワーファリン治療の指標であるPT-INRにて2.0前後でコントロール可とのことです
(ACC/AHA・ESCコンセンサスガイドライン、Mayo Clin Proc. 2008;83:639-645)
以下の指標があります。ご参考までに
by internalmedicine | 2008-06-03 08:35 | 医療一般