低体温治療:小児頭部外傷 予想外の結果:死亡率増加の可能性

論文の結論は以下のごとくだが・・・
重症頭部外傷の子供に対する、低体温(24時間)ランダム化トライアル(ISRCTN77393684)
重症障害、持続性植物状態、死亡頻度:治療群 31% vs 対照 22%



だが、この結果に専門の医師たちは驚いている。
低体温症のベネフィットの可能性を提示したが、死亡率は有意差ないものの、低体温治療で死亡率増加の可能性が指摘されたからだ・・・(e.g. http://www.individual.com/story.php?story=83653013





Hypothermia Therapy after Traumatic Brain Injury in Children
N Engl J Med. Vol.358:(23) 2447-2456 June 5,2008
多施設・国際トライアル
重症頭部外傷患者をランダムに、開始8時間で低体温治療(32.5℃ 24時間)と、正常体温(37.0度)割り当て
プライマリアウトカムは、6ヶ月目の Pediatric Cerebral Performance Category score に基づく不良アウトカム指標比率(i.e. 重症disability、持続性植物状態、死亡)

ランダム化割り付け総数225名
到達平均体温: 33.1±1.2°C vs 36.9±0.5°C

6ヶ月目不良アウトカム比率:低体温群 31% vs 正常体温群 22%
(相対リスク, 1.41; 95% 信頼区間 [CI], 0.89 to 2.22; P=0.14)

死亡:低体温群 23(21%) vs 正常体温 14(12%)
(相対リスク, 1.40; 95%CI, 0.9-2.27; P=0.06)

低体温群では、加温時期に低血圧(P=0.047)、昇圧剤投与(P<0.001)がより必要であった。

ICU滞在・入院滞在期間や他の副事象イベントは2群同等




10年前盛んに新聞・テレビで奇跡の治療とされ、小児ではないが、オシムさんの治療に「低体温療法」による奇跡回復(http://gendai.net/?m=view&g=wadai&c=050&no=18236)と伝えられ、過剰な期待がもたれるなか、日本でも、その合併症について危惧が報告されていた。

重症頭部外傷における低体温治療法時の循環・呼吸器合併症
脳神経外科ジャーナル Japanese journal of neurosurgery Vol.7, No.1(19980120) pp. 9-13
軽度低体温療法は重症頭部外傷の治療法として有用であったが, 全身合併症の発現率が高かった.

by internalmedicine | 2008-06-05 08:10 | 医療一般  

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