院内感染:セラチア

感染症専門家の立ち入り調査による事故の原因解明が待たれる。

2008/06/12-22:30 特別調査チームを設置=衛生管理の不備、解明へ-点滴患者死亡・三重県http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008061201050
 三重県伊賀市の診療所「谷本整形」で点滴を受けた患者が腹痛などを訴え、うち女性1人が死亡した問題で、県は12日、不衛生な診療施設で作り置きした点滴薬に細菌が混入し、感染が広がったとみて、13日に特別調査チームを設置することを決めた。
 谷本整形では、手ふきタオルの使い回しなど、ずさんな衛生管理が相次いで発覚。県は調査チームで点滴の作り置きを始めた経緯や時期など実態解明を急ぐとともに、同診療所に対し、衛生面での改善策を盛り込んだ報告書を提出するよう求める考えだ。
 県健康福祉企画室によると、谷本整形では多数の患者が出入りする「中待合室」の作業台や点滴室の机で点滴液を調合していた。診察終了後に余った点滴は、空調設備のない室内に一晩保管し、翌日使用することもあり、「いつ院内感染が起きても不思議ではない」状態だったという。
 谷本整形をめぐっては、死亡した女性のほか、入院患者は既に退院した人も含め22人に上り、このうち4人の血液からはセラチア菌が検出されている。



当初この報道、アナフィラキシーショックとして報道されていたが、細菌性・敗血症性ショックの可能性が高くなったようだ。特に、セラチアによるもの・・・これは私の周囲の医療関係者みな口をそろえて予想した原因菌であった。

案の定・・・

で、作り置きが話題になっているようだが、午前作りおいたモノが午後に繁殖することって有るのだろうか?想像しにくいのだが・・・セラチアを検索するとアルコール綿の話が出てくるので、次にはおそらくこれに話題集中する気がする。


セラチアによる病院感染についてY's Letter No.1 2002.04.01: Revised on 2002.08.19
アルコール綿の経時的な揮発による濃度低下に注意が必要です。アルコール綿はできる限り毎日交換し使い残しはすべて廃棄します。液剤をつぎ足すことは行ってはなりません。 50%イソプロパノールもセラチアに有効ですが、揮発する状態で放置すると比較的短時間で効力が不十分となり、より高濃度のアルコールでも揮発する状態で放置すればいずれ効力が不十分となります。これらのことが病院感染を起因する可能性について注意が喚起されています。また塩化ベンザルコニウムやクロルヘキシジンの水溶液中にセラチアが生存し病院感染を起因したと示唆する報告もあるので、これらの消毒薬も衛生的に取り扱い、使い回しを行わず、定期的に交換します。


万能壺だけを問題視することには以下のごとく反論が示されている。
セラチアによる病院感染について、濃度管理などが適切でなかったアルコール綿が原因のひとつとの疑いが報告されたが、その後の調査により、非常に濃度低下したアルコール綿が高度に汚染されないかぎり、セラチアがアルコール綿で生存できないことが報告されている。単包あるいは複数枚入りパック製品のアルコール綿を使用することは様々な面で衛生的・合理的であるが、それ以外の形態でのアルコール綿使用が不適切であると考える必要はない。万能壷であっても注ぎ足しをせず定期的な調製を行えばよい。なお、ヘパリンなど輸液類の多数回使用によるセラチア汚染の危険性が指摘されている。(http://www.yoshida-pharm.com/text/04/4_2_2_2.html)




セラチアによる院内感染防止対策の徹底について(平成12年10月27日)(医薬安第127号)(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省医薬安全局安全対策課長通知)
喀痰吸引、尿道カテーテル、中心静脈カテーテル留置、口腔ケア、ネブライザー吸入①等の医療行為、医療器具及び患者の状態(ねたきり等)と、喀痰中のセラチア陽性者の間には、統計的に有意な相関があった。また、血流感染に関して、静脈留置針②、三方活栓の取り扱い③、消毒用アルコールの種類、濃度及びその消毒効果に対する過信④、アルコール綿の取り扱い・保管⑤などに問題があったことが判明した。さらに、ネブライザー薬液や石鹸箱、ハンドソープ等からセラチアが検出された。これらを介した医療行為が同菌による院内感染を引き起こす要因の一つと考えられることから、これらの医療操作や医療器具の消毒及び管理方法等に関して留意する必要がある。


セラチア菌による院内感染 -病院内での集団感染予防のために-
日本医師会総合政策研究機構 主任研究員 五味晴美
平成14年1月21日


耳原総合病院における院内感染予防対策
http://www.medsafe.net/contents/recent/7serratia.html

それにしても、外来のみ診療の医院で、院内感染とは・・・



院内感染:セラチア_a0007242_14575683.jpg


院内感染対策のための指針策定
従業者の対する院内感染対策のための研修実施
院内感染対策のための委員会の開催
院内における感染症の発生状況の報告その他院な感染対策の推進を目的とした改善のための方策実施


医薬品の安全使用を確保するための責任者の設置
従業者に対する医薬品の安全使用のための研修の実施
医薬品の安全使用のための業務に関する手順書の作成と手順書に基づく業務の実施
医薬品の安全使用のために必要となる情報の収集とその他医薬品の安全確保を目的とした改善のための方策の実施
①医薬品の細葉・購入に関する事項(医薬品の保管場所、薬事法など法令で適切な管理が求められている医薬品
②医薬品の管理に関する事項(麻薬・向精神薬、覚せい剤原料、毒薬・劇薬、特性生物由来製剤など)の管理方法)
③患者に対する医薬品の投薬指示から調剤までに関する事項(患者情報(薬剤の服用歴、入院時持参してきた薬剤など)の収集、処方せんの記載方法、調剤方法、処方せんや調剤業の監査方法)
④患者に対する与薬や服薬指導に関する事項
⑤医薬品の安全使用に係る情報の取り扱い(収集、定驚など)に関する事項
⑥他の施設(病医院や薬局)との連携に関する事項


「医薬品の安全使用のための 業務手順書」作成マニュアル(pdf


医療機器の安全使用を確保するための責任者の設置
従業者に対する医療機器の安全使用のための研修の実施
医療機器の保守点検に関する計画の策定と保守点検の適切な実施
医療機器の安全使用のために必要となる情報の収集その他安全確保を目的とした改善のための方策の実施


by internalmedicine | 2008-06-13 14:37 | 感染症  

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