変遷する、市中肺炎グラム染色の意義

EVIDENCE-BASED ANSWER:Is sputum evaluation useful for patients with community-acquired pneumonia?(Journal of Family Practice, March, 2005 by Carl G. Morris)など、ここ数年、喀痰グラム染色に関する評価変化してきている。

市中肺炎の多くで良質の喀痰採取可能である。グラム染色は肺炎球菌・インフルエンザ桿菌診断に非常に特異的で、病因治療に対する抗生剤投与に役立つ.Prospective Study of the Usefulness of Sputum Gram Stain in the Initial Approach to Community-Acquired Pneumonia Requiring Hospitalization
Clinical Infectious Diseases 2000;31:869–874
とされ、それには反論はない。

だが、日常臨床に一般化できるのだろうか?

研修施設などでは行われるべきだろうし、時間的余裕のある外来を供給できる環境なら、やった方がよいのは確か・・・でも、消費する時間・コストが、それから得られるであろう

市中肺炎におけるグラム染色のcontroversy(モダンメディア 53 巻11 号2007[医学検査のあゆみ])
グラム染色の利点
①黄色ブドウ球菌やグラム陰性菌などの頻度の低い病原体をカバーし、不適切な抗菌や口量を減少させることができる(?)
②喀痰培養検査結果を確認できる


問題点
①グラム染色・培養検査検出率の施設間のばらつき(検体採取方法、輸送、迅速な処理の必要性、細胞学的基準の適切な利用方法、前処方の影響、解釈方法のばらつき)
②喀痰排出困難事例の存在
③市中肺炎における良質検体事例14%程度という報告(Arch Intern Med. 2004;164:1807-1811.


Community-acquired pneumonia: no clear role for sputum Gram's stain
Reed et al: Western Journal of Medicine 1996; 165: 197-204 IDSA/ATS CAPガイドライン
治療前のグラム染色や培養は、良質試料採取され、採取・輸送・処理過程の良質なパフォーマンス測定が合致される場合のみ、なされるべきである(Moderate recommendation; level II evidence.)


Nonvalue of the Initial Microbiological Studies in the Management of Nonsevere Community-Acquired Pneumonia
(Chest. 2001;119:181-184.)




Guidelines for the management of adult lower respiratory tract infections
Eur Respir J 2005; 26:1138-1180グラム染色
肺炎の最頻度標本は喀痰、CAPの細菌学的診断、治療の早期ガイドにとって価値がある。
だが、その評価は厳格なクライテリア下で評価されなければならない。
低倍率(100x)で、相対的な多形核細胞、扁平上皮細胞数を顕微鏡でスクリーンし、不適切な標本(扁平上皮 ≥10、 多形核細胞 ≤25 )ならそれ以上評価すべきでない。
喀痰の質の観察者間の一致性は十分。
グラム染色の価値にに関しては議論が大いにある。
12メタアナリシスで、感度(15-100%)、特異度(11-100%)にばらつきあり。一方、多くの研究で感度・と特異度ともルーチン培養では良好であった。
グラム染色スメアは、共生細菌、血液、胸水培養、TNAなどを参考にのみ評価されるべきとされるが、この立場の研究自体も比較的少ない。

細菌血症性CAPの前向き研究において、79%に充分な標本であり、血中で85%が検知された。他の研究では、良質喀痰において、形態が単一・優性である場合、肺炎球菌感度、特異度は35.4%、96.7%、インフルエンザ桿菌42.8%、99.4%であった。
充分な喀痰試料の場合、210例中175(80%)の暫定診断がなされた。

要するに、喀痰細菌グラム染色検査の限界は喀痰試料の質なのである。
多くの肺炎患者は喀痰排出不能で、特に高齢者では困難。
満足行く喀痰標本は、47/174(32%)、210/533(39%)、23/42(55%)、156/205(76%)という報告、若い軍人では90%であった。
技師間のグラム染色の一致性が低いことも報告されているが、片方には一致性も報告さえている。ラボでの質管理が重要ということである。
喀痰グラム染色に関する多くの限界があり、CAPのマネージメントでどのような役割をこの検査が担えるのか?この答えはYesであるが、起炎可能細菌が主な状況である場合においてである。

【推奨】グラム染色は、CAP患者から充分な喀痰試料採取され、時期を逸せず処理された場合に推奨される (A3)

by internalmedicine | 2008-06-16 09:42 | 感染症  

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