看護師による家族ライフスタイル介入: EUROACTION
2008年 06月 16日
Wood DA, et al "Nurse-coordinated multidisciplinary, family-based cardiovascular disease prevention program (EUROACTION) for patients with coronary heart disease and asymptomatic individuals at high risk of cardiovascular disease: a paired, cluster-randomized controlled trial" Lancet 2008; 371: 1999-2013.
心血管疾患予防のエビデンスがあるに関わらず、臨床実践の場での予防的ケアは不十分
European Action on Secondary and Primary prevention through Intervention to Reduce Events (EUROASPIRE) study では、冠動脈疾患マネージメントとして"a collective failure of medical practice"と表現される実質上の失敗に終わった。
European Society of Cardiologyは、多要因リスクマネージメントのEUROACTIONモデルを開発、看護師コーディネートの、他職種的、家族ベースの予防的心臓プログラムが心血管疾患予防目標に到達させられるかどうかの検討を行った。
8つのヨーロッパ各国、6対の病因6類のGPマッチされたクラスターランダム化、対照トライアル
・intervention programme (INT)
・usual care (UC)
心血管系疾患発症高リスク
プライマリエンドポイント:1年次の家族ベースのライフスタイル変化;血圧・脂質・血糖マネージメント、心臓予防薬剤処方
ITT解析
ISRCTN 71715857
リスク減少プログラムは患者・家族教育、多職種的医療チーム(看護師)、栄養士、理学療法士個々評価、スーパーバイズされた運動、心臓予防的薬剤の開始・タイトレーションを心臓循環器専門医(病院)と家庭医(GP)で行う
看護師は、患者とパートナーのリスク要因評価を参入時と受診毎行い、薬剤アドヒランスをモニターする
16週後、患者とそのパートナーをチームメンバーで再評価
冠動脈疾患のある患者とパートナーを病院介入群と通常治療群に分ける
冠動脈疾患リスクの高い患者とパートナーはGP介入群に同様に振り分ける
病院ベース介入群は1589名、通常群は1499
GPベース介入(EUROACTIONプログラム)群は1189で、通常群は1128
プライマリエンドポイントは1年後の特異的目標(家族ベースライフスタイル変化、血圧・脂質・血糖目標マネージメント、心血管防御的薬剤の処方率)到達患者比率
研究最後で、病院ベースの患者をEUROACTIONプログラムに割り付け、通常のケアとの改善率比較・禁煙率: 58% versus 47% (P=0.06)
・飽和脂肪減少 エネルギー比<10%: 44% vs 40%(P=0.009)
・魚脂週3回以上:17% vs 8%(P=0.04)
・フルーツ・野菜1日最低400g:72% versus 35% (P=0.004)
・運動週4回以上:54% versus 20% (P=0.002)
・目標血圧(糖尿病):65% versus 55% (P=0.04)
・血圧治療目標(非糖尿病):72% versus 60% (P=0.04)
・スタチン使用: 86% versus 80% (P=0.04)
GPにおいて
・フルーツ・野菜1日最低400g: 78% versus 39% (P=0.005)
・運動週4回以上: 50% versus 22% (P=0.01)
・ベースラインのBMI25+より5%以上減少:16% versus 5% (P=0.005)
・目標血圧(糖尿病): 58% versus 41% (P=0.03)
・目標血圧(非糖尿病):67% versus 48% (P=0.04)
・ACE阻害剤使用: 29% versus 20% (P=0.02)
・スタチン使用:38% versus 23% (P=0.03)
パートナーにおいても、EUROACTIONプログラムでは、同様に好ましい傾向があった
EUROACTION は、代謝・ライフスタイル要因の改善が臨床レベルでみられ、改善の余地、特に臨床的アウトカム改善に関して希望がもてるライフスタイル改善がもたらされた。
いくつかの要因、飽和脂肪酸、果物・野菜の摂取などはベースラインで相違があるなど研究の限界がいくつか提示されている。禁煙だけに注目し、新規喫煙、喫煙再開をその項目に入れてなかった失敗もある。
日本の早計な”メタボ検診・指導”は、このような科学的エビデンスを得ようと努力しただろうか?
・・・実に無惨な勇み足の”日本の医療行政”・・・
by internalmedicine | 2008-06-16 14:05 | 医療一般