うつと糖尿病の関係:治療下糖尿で合併頻度増加、未治療糖尿で頻度低下・・・など

糖尿病の診療をしていると、重篤なうつ状態に有る患者に遭遇する。病初期と思われるIFGやIGTの対象者でも同様にそういう傾向があるのかと思いきや・・・どうも違うようだ。なんか新たな認識が加わった。IFGなどでは病態の深刻さを考えないからあたりまえなのだろうか?ライフスタイル変容を厳しく考える必要があろう。

Medpageでは、” Multi-Ethnic Study of Atherosclerosisで、2型糖尿病患者治療患者でのみ、うつ症状発症がみられ、重症度比較した未治療群ではみられなかった”ということで、治療そのものが“うつ”をもたらす可能性と解説している。


ベースラインのうつ症状に関して、合併する2型糖尿病との軽度の関連性は、ライフスタイル要因で部分的に説明可能。

IFGと未治療2型糖尿病では合併するうつ症状頻度はむしろ少ないが、治療下の2型糖尿病ではうつ症状と正の相関が見られた。この相関は、共役因子や介在要因により補正されないもので、治療中のうつ頻度増加というのは確実ということになる。



Examining a Bidirectional Association Between Depressive Symptoms and Diabetes
JAMA. 2008;299(23):2751-2759.
【目的】うつ症状と2型糖尿病の2方向解析
【方法】 Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis(長軸、民族多様的子ホーと研究
US男女45-84歳(2000-2002年参入、2004-2005年までフォローアップ)
【主要測定項目】 うつ症状(Elevated depressive symptoms defined by Center for Epidemiologic Studies Depression Scale (CES-D) score ≧16)、抗鬱薬剤使用、その両者
正常血糖(<100 mg/dL)、IFG(100-125 mg/dL)、2型糖尿病 (≥126 mg/dL or 治療)とカテゴリー区分
Analysis 1:ベースラインで2型糖尿病無し5201 名で、うつ症状の有無を問わない、2型糖尿病発症相対ハザード3.2年


Analysis 2:ベースラインでうつ症状無しの4847名で、2型糖尿病の有無を問わない、うつ発症相対オッズ比3.1年


【結果】
analysis 1:2型糖尿病頻度1000人年につき、鬱症状の有り:22.0、無し:16.6

人口動態的要因・BMI補正にて、2型糖尿病発症リスクはCES-Dスコア5単位増加毎、1.10倍
代謝、炎症、社会経済、ライフスタイル要因補正後もこの相関は持続、ただ、後者補正後有意差は無くなった (relative hazard, 1.08; 95% CI, 0.99-1.19)


analysis 2:うつ症状スコア頻度増加は、正常血糖:27.9、IFG:31.2、2型糖尿病:61.2(1000人年あたり)

正常血糖群比較の人口動態要因補正オッズ比は、IFG:0.79 (95% CI, 0.63-0.99)、未治療2型糖尿病: 0.75 (95% CI, 0.44-1.27)治療2型糖尿病 1.54 (95% CI, 1.13-2.09)

合併うつ症状頻度との関連は、BMI、社会経済的、ライフスタイル要因、その組み合わせによる補正後実質的に相関は存在しない

民族横断的に、同様の比較結果である。

by internalmedicine | 2008-06-18 09:20 | 糖尿病・肥満  

<< 易ケトーシス2型糖尿病:HHV... 糖尿病合併症としての聴覚異常 >>