心不全合併心房細動版:リズム治療vsレート治療

心房細動+鬱血性心不全患者の臨床トライアル

リズム・コントロールとレート・コントロール比較

心不全患者の10-50%が心房細動という報告で、心房細動そのものが心不全を惹起し、心不全が心房細動を惹起する。過剰な心室レート、心房収縮低下、不規則な心室縦束時間が臨床的な不利益を患者に与える。洞性調律維持より心房細動を有する場合が予後不良で、心房細動が死亡リスク要因として独立した要因であるという認識がある。

心不全患者の心房細動の予後に関わる重要性の観点から、洞性調律への復調、電気的除細動や抗不整脈薬剤が試みられてきたが、一方抗不整脈薬剤による副事象の問題が顕在化してきている。6つのトライアルからのデータも心房細動患者のリズム・コントロールをルーチン戦略とすることを支持する結果ではなかった。
心不全重症患者でもこのことが応用できるかどうかが問題になってきていた。

全ての臨床アウトカムに関して、2つの戦略はほぼ同程度、単純なアプローチである、レート・コントロールを患者では選択すべきという論文

Rhythm Control versus Rate Control for Atrial Fibrillation and Heart Failure
N Engl J Med. Vol.358(25):2667-2677 June 19,2008

他施設、ランダム化トライアルで、洞性調律維持をねらうリズム・コントロールと、心室レート維持を行うレート・コントロール比較
左室駆出率35%≧で、鬱血性心不全症状、心房細動既往のあるもの
プライマリアウトカムは、心血管原因死亡までの期間
【結果】1376名を参入させ、リズム・コントロール群682名、レート・コントロール群694名
平均フォローアップ37ヶ月
心血管原因死亡は、リズム・コントロール群で182(27%)、レート・コントロール群で175(25%) (リズム・コントロールハザード比, 1.06; 95%信頼区間, 0.86 ~ 1.30; P=0.59 by the log-rank test).

セカンダリ・アウトカムは2群間同様(リズム・コントロール群 vs レート・コントロール群)
全原因死亡:32% vs 33%
卒中:3% vs 4%
心不全悪化:28% vs 31%
心血管・卒中・心不全による死亡組み合わせe:43% vs 46%

どの事前定義サブグループにおいても、有意な差は良好な影響検知無し




リズム・コントロール
心房細動予防積極治療群では、抗不整脈薬剤治療にて洞調律にならない症例では、電気的除細動を、ランダム化後6週間以内に行うリズム・コントロール推奨。必要なら、3ヶ月以内に、2回目の除細動を行う。
除細動は心房細動再発事例で推奨し、アミオダロンを洞性調律維持のための薬剤として選択、そして、もし必要ならsotalolかdofetilideを用いる
もし徐脈にて抗不整脈使用ができないなら、恒久ペースメーカーを推奨する。
抗不整脈治療反応しない患者では非薬物治療を選択できるものとした


レート・コントロール
β社団剤+ジギタリスを用いて、目標心拍に向けて投与量補正
心室レート目標を、安静時12誘導心電図で80/分、6分間歩行試験で110/分未満とする
4ヶ月後、12ヶ月後に行い、後は年毎。
AV結節ablationやペースメーカー治療をレート・コントロール目標に合致しない場合、推奨する




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sotalol:第Ⅲ群抗不整薬作用を併せもった β 遮断薬
dofetilide :選択的Kチャネル遮断薬

by internalmedicine | 2008-06-19 08:27 | 動脈硬化/循環器  

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