延命治療中断決定は60日目の死亡率を増加させる

あたりまえの結論のようだが、実は奥深い報告

ライフサポート中止しなかった場合、苦痛ある生存期間を引き延ばし、患者・家族にその期間苦痛を与え続け、社会的リソースを消費する・・・そういう現実を直視せず、生存期間・生存率だけを問題にし続ける人たちの存在がことを複雑にする。

Effect of Decisions to Withhold Life Support on Prolonged Survival
(Chest. 2008; 133:1312-1318)
【序文】重症患者での ライフ・サポート治療(LST)中断の長期死亡率の影響は不明
ICU入室60日死亡率は、他の適用となる医療施行した場合、LST中断決定の有無に影響されないのではないかという仮説の証明
【方法】大学関連教育病院のICU入室2211名の連続患者
アウトカムのバランス化群別にて、確率多変量回帰モデル
LST中止指示のpropensity score [PS]
オーダーにて201名の患者毎に、closet PSを行うオーダー無しの患者をマッチした
死亡率をマッチ化されたペア毎に比較
Cox survival analysisを主な解析範囲に従い施行
【結果】ICU入室後60日にて、50.5%がICUにてライフサポート中止指示開始にて死亡
オーダーのない患者では25.8%(リスク比 2.0;95%信頼区間 1.5-2.6)
死亡率の差は、約1年で2運間の差は増加し続けた
【結論】 仮説に反して、ICUでのLST中止決断は少なくとも60日後の死亡率増加と関連した。




多くの医師たちは、”harm”じゃなくて”good"なものを行っていると信じている。

ヒポクラテスの“Primum Non Nocere”(Above All, Do No Harm! ”まず、害を与えないこと”)・・・これが後年意図的に改修されたフレーズであることは以前述べた(http://intmed.exblog.jp/2212718/)が、多くの医師はこれをまだ盲信し、実行しようとしている。

11世紀から西洋においては、”good Samaritan tradition”(よきサマリア人の伝統)、 ”Order of the Knight Hospitallers”なる伝統、その根幹は、善行に関して訴追されないという伝統である。


日本にはこういう伝統がなく、その結果なのか・・・ことある毎に医師たちは責め立てられ、萎縮した医師たちは、渋々、延命治療を行い続ける日本の現状。・・・それさえ、病院の金儲けだと批判するメディア

”beneficence and non-maleficence ”は、日本では善管注意義務となっていると思うのだが、前提は、よきサマリア人traditionであるはずだ・・・前提が崩れているから、医療の現場で”散逸・離散・回避・・・”が生じる。

それにしても、気になるのは、”公的病院のお偉いさんたちの軽薄な言動”である。

一般の関心は、医学的、社会システム、科学技術的な終末期医療の質の改善であるはずだ。宗教家や倫理学者が入り込むのは結構なことだが、概念的な遊びに翻弄する連中が、真に必要とされる科学的討議のじゃまを行う。

終末期医療の根管がない底の浅い日本の医療・・・この国の医療はとうに滅びているのだ

参考文献:Ethics and decision making in end stage lung disease
Thorax 2003;58:272-277

by internalmedicine | 2008-06-27 10:14 | 医療一般  

<< 公衆衛生問題:戦争死亡者数 カテーテル挿入部の消毒薬:日米の相違 >>