COPDとうつの関係:はじめての本格的コホート研究だそうで・・・

・・・今頃・・・という気もがする研究だが・・・COPDとうつなどというのは癌や動脈硬化疾患などと異なり、資金が集まりにくい・・・よくやったと賞賛すべき研究なのだろう

Relationship between depression and exacerbations in COPD
Eur Respir J 2008; 32:53-60
慢性閉塞性肺疾患は急性悪化と関連し、頻回な急性増悪傾向の患者が存在し、急性悪化のすくない患者に比べ、そういう個人はQOL悪化をもたらし、日常生活活動に大きな制限を生じ、更なる病状進展につながるとされる。

特性明示された前向きコホート研究で、うつ(Centre for Epidemiologic Studies Depression Scaleによる評価)が急性悪化頻度、全身性炎症、さまざまな社会的要因と関連するか検討
急性悪化時のうつ症状増加との関連も調査したもの


頻回の急性悪化は有意にベースラインうつスコア中央値が高い(中間4分位との比較:17.0 (7.0–25.0) vs 12.0 (6.0–18.0))

うつ患者では戸外での時間が少なく、有意にQOL( St George's Respiratory Questionnaireによる評価)は悪化

うつは有意に急性悪化時にベースラインより増加する(12.5 (5.0–19.0) vs 19.5 (12.0–28.0) )


この研究は、うつとCOPD急性悪化の関連を提示したはじめての前向きコホート研究で、COPDのアウトカムとして重要な頻回な急性悪化は、急性悪化少ない事例よりよりうつになりやすい。


COPD患者とうつの関係って、どちらが先かどうか?糖尿病のほうの研究のほうがやはり進んでいる気がする。


うつと糖尿病の関係:治療下糖尿で合併頻度増加、未治療糖尿で頻度低下・・・など 2008-06-18

糖尿病とうつ 2007-04-24

糖尿病などは治療がすすむと“うつ”になるという・・・もともと自覚症状の乏しい糖尿病という病態はそうだろう。

COPDも病期層別化、あるいは、病期進行と、うつスケールとの関連などが検討されるべきであり、認知行動療法や抗うつ薬が介入としてどの程度の臨床的インパクトをもつかなども検討されるべきだあろう。


NICE ガイドラインでは“Identifying and managing anxiety and depression”の項目で、
COPD は、" disabling and distressing symptoms"を生じる。要するに身体活動困難となり、呼吸苦を生じるのだが、そのため社会的に孤立し、娯楽活動を断念する。この要因は不安やうつを生じる可能性があり、うつの症状や兆候が、COPDそのものと類似し、見逃されることが多い。また、うつ・不安の存在が患者のQOLを有意に悪化させ、"vicious circle”(悪循環)に陥る。
うつは身体症状への患者の取組を減退させ、耐用性を減弱させ、心理社会的にうつをさらに悪化させる
と記載されている。


“患者会”などの横断的ふれあいにもとづく活動や社会参加意識を生じさせるイベントを行うこともCOPDに伴ううつの包括的ケアには重要なのだろう・・・尤も、だれがするかだが・・・


呼吸器疾患の研究ってだいたい他の領域の物まねばかり・・・他分野の研究をみれば、日本の呼吸器系の学会のほとんどの報告は予想できる・・・といったら怒られるだろうなぁ・・・と別の分野の先生に言ったら、別の分野も・・・だそうだ(笑)

by internalmedicine | 2008-07-01 09:50 | 呼吸器系  

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