老人におけるFetuin-A濃度と糖尿病発症リスク

fetuin-Aとは、肝蛋白で、筋肉・脂肪のインスリン受容体と結合し、in vitroではインスリン活性を抑制するもので、インスリン抵抗性と横断的研究で判明しているもの

機能性良好な老人において、血中fetuin-Aは糖尿病発症と相関し、インスリン抵抗性マーカーと独立したものである

しかし、fetuin-A高値が糖尿病発症と関連しているかどうか不明であった。

ひとつのメディケアの症例対照研究(Health ABC Study :Health, Aging, and Body Composition study (体組成と健康の変化の観察研究)における)で、Ixらは後顧的に明確な糖尿病のないランダムサンプルにて、、ベースラインのfetuin-A値と、6ヶ月フォローアップにて糖尿病発症した参加者を含めた検討で、ベースラインでのfetuin-A高値では、糖尿病発症と関連すること、身体活動性、炎症性生体マーカー、他のインスリン抵抗性関連測定項目と独立した因子であった。


Fetuin-A and Incident Diabetes Mellitus in Older Persons
JAMA. 2008;300(2):182-188.
・糖尿病発症135名(10.1/1000人年)


補正モデル(年齢、性、人種、ウェスト径、体重b、身体活動性、血圧、空腹時血糖、HDL、これエステロール濃度、中性脂肪、CRP))
・fetuin-A最高三分位(>0.97 g/L)では、糖尿病発症頻度:13.3/1000人年
・fetuin-A 最少三分位(≦ 0.76 g/L)では、6.5/1000人年
補正ハザード比 2.41(95%CI 1.28-4.53 P=.007)

この相関はadipocytokine値に影響されないが、内臓脂肪の補正でやや減衰する
(補正ハザード比 最高 vs 最低 三分位 1.72; 95% 信頼区間, 0.98-3.05; P = .06)


Medscapeに解説記事

住民ベースの研究ではないため一般化に直結しないという限界がある。そして、高齢者だけでなく年齢層を広げての検討が必要だろうとの指摘。こういうことが判明すれば、ターゲット指標として浮かび上がるかもしれない。Fetuin-Aは肝細胞で産生される糖蛋白で、血中に高濃度分泌される。筋肉・脂肪のインスリン受容体tyrosin kinaseに結合し、インスリン抵抗性を生じる物質
以前の横断研究ではfetuin-A高濃度は、全身のインスリン抵抗性と相関すると言うことであった。だが、fetuin-Aは血管の石灰化とは、動物・ヒトとも逆相関であり、fetuin-A濃度低下を目指す治療が動脈石灰化増加をもたらす可能性があることを意味するのかもしれない。この解釈はfetuin-Aが単純に動脈硬化悪化一途というわけではないことも意味しており、解釈上今後問題となるだろう。インスリン抵抗性との相関にかかわらず、fetuin-Aは2型糖尿病は症リスクと関連なかった。この研究はこの問題に注目して行われたものである。



CKDの合併症・予後の関連でも注目されているようだ(http://www.nature.com/ki/journal/v72/n2/fig_tab/5002355f1.html)。

by internalmedicine | 2008-07-09 08:54 | 糖尿病・肥満  

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