医者のバーンアウトの診療への影響調査 : 謝罪マニュアルのなれのはて?

拙訳なんで何かいているかわからないかもしれないが、基本的には、バーンアウト傾向の強い医者とそうでない医者は、表面的にはさほど差はない。だが、患者側の方がラポート形成できなかったというイメージを持つ頻度が増える。

ラポート:rapport
〈フランス語〉一致{いっち}、調和{ちょうわ}、意思{いし}の疎通性{そつうせい}、親密{しんみつ}な関係{かんけい}



Roterの相互作用分析システム(RIAS: Roter Interaction Analysis System、1991)
参照:http://www.jpos-society.org/news/no37/37_14.html


Physician Burnout and Patient-Physician Communication During Primary Care Encounters
Journal of General Internal Medicine, 07/14/080884-8734 (Print) 1525-1497 (Online)
【背景】以前の研究から、医療技術提供者のバーンアウトとsuboptimal自己報告コミュニケーションとの関連が示唆されているが、医師のバーンアウトと患者・医師コミュニケーション行動観察結果との関連に関して報告はない。医師のバーンアウトとコミュニケーション行動観察についての報告
【デザイン】高血圧治療への患者adherenceの改善のための介入トライアルのデータの長軸的な研究
Baltimoreの15の都市部地域ベースクリニック
【被験者】40名の医師と235名の成人高血圧患者
民族的なマイノリティーと貧民をオーバーサンプリング
53%は女医で、平均経験年数11.2年
235名の患者のうち、66%が女性で、60%がアフリカ系、90%が被保険者
【測定】Roter Interaction Analysis Systemを用いた外来時のコミュニケーションのオーディオテープ分析でtrustとconfidenceに関する満足度の患者レーティング
【結果】医師のバーンアウト評価と患者との接触の間の期間中央値は15.1(5.6-3.0)ヶ月
多変量解析にて、医師バーンアウトに基づく医師コミュニケーションに関して有意差は判明せず。
しかし、低バーンアウト医師の患者と比較して、高バーンアウト医師の患者では、2倍ほどネガティブなラポートがあった (頻度リスク比 2.06, 95% CI 1.58 – 2.86, p < 0.001)
医師バーンアウトは有意に医師、患者への影響、patient-centeredness、verbal dominance、接触時間に相関を認めない。
医師のバーンアウトは患者の満足度、confidence、trusに影響を与えない
【結論】医師のバーンアウトは医師コミュニケーション行動へ影響を与えず、患者指向型コミュニケーションのほとんどに影響を与えなかった。
しかし、患者側は、より多くのラポート形成行動をおこなった。
この知見は、医師のバーンアウトと患者医師コミュニケーションの複雑な関係があると思われ、将来の研究としては、患者のアウトカムとリンクされるべきである。



謝罪マニュアルトラップ 2007-08-16
で述べたが、医療の現場でなにか不都合なことが起こると、全て医者の責任にされる。行政は現場責任に、医療の現場の長も現場医師へ、当然のごとくパラメディックは医者へ、患者・患者家族も当然医者へすべての責任を医者に・・・
診療報酬を減らしたくせに行政の現場への圧力はさらに量的に増大している。患者・家族のニーズは途方もなくなり、控えめに言っても双方に問題があるのに一方的に医者のせい・・・と地球の中心から患者は叫ぶ


これじゃ、医者がバーンアウトしないはずない

内科学会誌に”Difficult Patient"問題を書いた。
教育界でも過度要求・場違いな要求をする親の存在が問題となっているが、医療界では、この”difficult patient”の問題は医療コスト増大だけじゃなく、医者のバーンアウトを惹き起こし、社会資源の浪費につながる問題なのである。


役人はどうしようもないアホだからどうしようもないが、公的病院や大規模病院の指導者・管理者たちまで、大挙して謝罪一辺倒に偏ってしまっている。一度、自院の医師のバーンアウト調査をしてはいかがだろう・・・

by internalmedicine | 2008-07-15 08:43 | 医療一般

 

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