悪性リンパ腫:診断と治療の私的まとめ
2008年 07月 29日
リンパ節の無痛性腫大で、弾性硬とかゴム状といった性状で、最大径が1.5cmから2cm以上、そういった場合はリンパ腫を疑うべき、大きな腫瘤や、2箇所以上のリンパ節領域にまたがっている場合も注意必要
ATL、多発性骨髄腫以外という前提で・・・
・悪性リンパ腫にはホジキンリンパ腫という独立した疾患概念があってそれ以外を分けているという考えからなりたつ
・非ホジキンリンパ腫で、覚えておくべき一般臨床でふれる可能性
B細胞リンパ腫:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(Diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)、粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue:MALT)リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫
T/NKリンパ腫:末梢T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫
・B細胞が60-70%(これでも日本人は比率が多い)、T/NK+ATLでの頻度が高いことが日本の特徴
・リンパ節性が6-7割、リンパ節外が3-4割程度
・中枢神経系DLBCL、皮膚はT細胞、肺・消化管・線組織からMALTリンパ腫やDLBCL
・胃に発生するリンパ腫の約半数がMALTリンパ腫、残り半数がDLBCL
Hodgkinリンパ腫:
多核のReed-Sternberg細胞やそのvariantの単角のHodgkin細胞と呼ばれる巨細胞と、巨細胞周囲をロゼット様に環状に囲むT細胞で特徴づけられる
・結節性リンパ球優勢型Hodgkinリンパ腫(nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphoma, NLPHL)
古典的Hodgkinリンパ腫(classical Hodgkin lymphoma)
・リンパ球豊富型(lymphocyte-rich classical Hodgkin lymphoma: LRCHL)
・混合細胞型(mixed cellularity classical Hodgkin lymphoma : MCHL)
・結節性硬化型(nodular sclerosis classical Hodgkin lymphoma:NSHL)
・リンパ減少型(lymphocyte-depleted calassical lymphoma:LDHL)
・20歳代と60歳代にピークの2峰性、男性に多い
・病変限局した疾患で、隣接リンパ組織に連続して広がる
・定期検診時の縦隔リンパ節腫大指摘が発見動機の60%
・35-30%に発熱、小数例にPel-Ebstein fever(無熱期間を挟んで数週間続く熱型)
・発熱・盗汗と体重減少
治療方針
・限局性:短コース(4-6コース)の化学療法+区域放射線療法:IFRT(involved field radiotherapy)の併用:c-m治療(combined modality therapy)
・初発進行期Hodgkin:ABVD療法が標準的治療→寛解後再発例では救護化学療法奏功例で自家造血幹細胞移植併用大量化学療法実施(標準)
いわゆるrisk-adapted therapy
・Cotswolds病期分類
・IPS(International Prognostic Score)
予後不良因子(EORTC):巨大縦隔腫瘍・年齢51歳以上、病型(mixed cellularity)、赤沈、横隔膜の同側に4箇所以上の病変
染色体転座の問題
・t(14:18)(q32:q32)転座:BCL2遺伝子・免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子BCL2蛋白は細胞死を防ぐ機能を持っている。正常の濾胞B細胞は死にやすい状態でよりアフィニティーの高い抗体を産生するB細胞の選択に有用。転座により発現されない二次濾胞B細胞でBCLが発現(異常発現)。B細胞を死ににくくして、腫瘍化につながる。濾胞性リンパ腫
・t(11:14)(q13:q32)転座:BCL1(CCND1)遺伝子・免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子
BCL1(CCND1)遺伝子は細胞回転を制御する機構があり、マントル層に粗zんざいする正常B細胞の眼根期グロブリン受容体は遺伝子変異が無く、Germline型で、細胞周期は回ってこない。転座によるBCL1(CCND1)遺伝子の異常発現はその細胞に細胞回転を惹き起こすシグナルを生じ腫瘍化につながる:マントル細胞リンパ腫
・11番と18番、14番と18番、1番と4番の転座:特に11番と18番の転座(API2-MALT1キメラ遺伝子形成)ではピロリ菌除菌の反応性が悪い:MALTリンパ腫
治療:
・リツキシマブ:濾胞性リンパ腫などの低悪性B細胞リンパ腫
・プリン誘導体
・節外性DLBCLの標準治療
・R-CHOP療法ないしはCHOP療法3コース後局所の放射線療法
・進行期ならR-CHOPないしCHOP療法6-8コース
CNS原発DLBCL治療のキードラッグ:大量methotrexate(MTX) ・・・他、シタラビン大量投与+(髄注や放射線療法)
T細胞性リンパ芽球性リンパ腫(WHOでは急性リンパ性白血病と区別せず)
・多剤併用化学療法(プレドニン、ビンクリスチン、L-アスパラギナーゼ、シクロフォスファミドなどのアルキル化剤、アントラサイクリン系など)→初回寛解時造血幹細胞移植は議論中
ATLの治療:modified LSG15>biweekly CHOP (JCOG)→同種造血幹細胞移植療法
【造血幹細胞移植】
・自家:化学療法に感受性を示す、再発後の中高悪性度リンパ腫症例
(国際予後因子指標:IPI(international Prognostic Index)による高危険群での自家移植併用大量化学療法が検討中)
・同種:自家移植後再発、造血幹細胞採取困難事例:治療関連死が高い:ミニ移植+GVL効果
by internalmedicine | 2008-07-29 17:13 | メモ