PCI後の再潅流障害にcyclosporin有効?

cyclosporineが心筋の再潅流障害を減弱する可能性が示唆されたためパイロットトライアルが行われ、有意にCK遊離が減少したという話



Effect of Cyclosporine on Reperfusion Injury in Acute Myocardial Infarction
N Engl J Med Vol. 359(5):473-481 July 31,2008
パイロットいえど、58名のSTEMI(ST上昇型心筋梗塞)にcyclosporine 2.5mg/kg bolus投与 vs 生食を対照として、PCI直後に使用
心筋梗塞サイズを、CK遊離量とtroponin Iで測定し、サブグループ27名をMRIにて梗塞5病日に検討

cyclosporineと対照群は虚血時間、リスク状態にある領域のサイズ、EFなどPCI前同等。

cyclosporine群は対照に比べ有意にCK遊離減少 (P=0.04)
troponin Iの遊離は有意差無し (P=0.15)

MRI検討による、5病日hyperenhancement領域の絶対的massは有意にcyclosporin群で減少:中央値 37g(中間4分位  21 ~ 51) vs 対照群 46g(中間4分位 20 ~ 65 P=0.04)

cyclosporine投与の副反応は認められない。




なぜ、cyclosporinなのかは・・・

再潅流そのものは疑いなく利益性があるが、心筋のstunningや心室性不整脈、微少血管障害などの破壊的影響がある。再潅流は不可逆性心筋障害さえ生じる可能性があり、それは、特定の膜透過性遷移に伴うミトコンドリア機能障害の形で生じる。


ミトコンドリア透過転移細孔(mitochondrial permeability-transition pore)と呼ばれる非特異的high-conductance channelは、ミトコンドリア内膜に存在し、膜電位をcollapseさせ、呼吸鎖の脱共役(uncoupling)、cytochrome cや他のproapoptotic factorの流出、ATP合成より加水分解を生じる;こういった代謝的変化により心筋細胞死につながる

再潅流後数分で、カルシウムのoverloadとROSの過剰産生はミトコンドリアの透過転移細孔のトリガーとなり、GriffithsとHalestrapはラット分離心で、透過転移細孔が虚血中閉鎖し、再潅流時開くことを見いだしている。

既知の免疫抑制効果に加え、cyclosporineはミトコンドリア透過転移抑制効果を有し、実験研究下のいくつかの報告では、虚血・再潅流障害を抑制するという報告があった。

by internalmedicine | 2008-08-01 09:24 | 動脈硬化/循環器  

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