良性肥満:インスリン感受性が保たれ、早期合併症がない表現型の存在・・・肝臓脂肪が重大な指標

肥満自体、2型糖尿病と心血管疾患の重要なリスク要因であるが、体脂肪分布は更なる独立した肥満内部の決定因子となる可能性があり、引用の論文の研究が計画されたようだ。総体脂肪量に対して、過剰な内臓脂肪組織量は、インスリン抵抗性のリスク状態を高め、高度心血管リスク特性となることは異論がないだろう。逆に言えば、さほど、インスリン抵抗性をしめさず、動脈硬化進展に関わりが少ない“良性の肥満”なるものが存在する可能性もあるということになる。

たまたまの結果だろうか?“代謝的良性肥満”の存在を示唆するStefanらの研究。

Identification and Characterization of Metabolically Benign Obesity in Humans
Arch Intern Med. 2008;168(15):1609-1616.
【背景】 肥満はインスリン抵抗性、2型糖尿病、動脈硬化症のリスク要因である。加えて、一定の体脂肪総量に対して、内臓脂肪の過剰、肝臓・骨格筋での脂肪蓄積はリスクを促進する。逆にいえば、肥満でさえ、代謝的に良性の脂肪分布表現型が存在する可能性がある。

【方法】 314名の対象者で、総脂肪、内臓脂肪、皮下脂肪をMR断層で測定。
インスリン感受性はOGTTで推定。
4群に対象者をわけ
・正常体重群:BMI<25、過体重群:BMI 25.0-29.9、肥満インスリン感受性群(IS:BMI ≥30.0 かつ、インスリン感受性最大四分位、肥満インスリン抵抗性群(IR):BMI≧30.0、インスリン感受性最少第3四分位)

【結果】総全身・内臓脂肪量は、正常体重群より過体重・肥満群に多い (P < .05)
しかし、肥満者郡内での相違はない。

肥満IS群 vs 肥満IR群比較で、骨格筋の局所的脂肪 (P < .001)と肝内脂肪(4.3% ± 0.6% vs 9.5% ± 0.8%)、総頚動脈IMT (0.54 ± 0.02 vs 0.59 ± 0.01 mm)はより少なく、インスリン感受性が高い (17.4 ± 0.9 vs 7.3 ± 0.3 arbitrary units)

予想外に、肥満ISはインスリン感受性があり、IMTは統計的に星状体従軍と統計学的な差異なかった (18.2 ± 0.9 AU 、0.51 ± 0.02 mm)

【結論】 ヒトにおいては、代謝的正常肥満はインスリン抵抗性や動脈硬化新規発症を随伴しない。さらに、肝内の局所的脂肪が、この肥満内の良性表現型同定にとって、内臓脂肪より重要である。

by internalmedicine | 2008-08-12 10:01 | 動脈硬化/循環器  

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