頭部外傷と慢性疼痛
2008年 08月 13日
頭部外傷後の肩痛(Clinical Rehabilitation, Vol. 21, No. 2, 171-181 (2007)など日常臨床で内科でも相談を受けることがある。”Traumatic brain injury and chronic pain”という概念でひとくくりされ検討されてるようだ。
Centers for Disease Control and Preventionは、頭部外傷(TBIs)は140万人と推定
以前の報告ではTBIsと慢性疼痛症候群(たとえば、頭痛)の関連は、軽症TBIにおいて頻度が高いとされ、事故(unintentional trauma)より暴力による頭部外傷にて多いとされる。
今回の報告は、TBI後の診断不足としての慢性疼痛の頻度を判断し、慢性疼痛とTBIの重症度の相関をレビューし、市民と軍人の間のTBI後の疼痛の特性を検討
Prevalence of Chronic Pain After Traumatic Brain Injury
A Systematic Review
JAMA. 2008;300(6):711-719.研究(15横断、5前向き、3後顧的)を含む4206名を検討対象
12研究で、1670名の頭痛
このうち966名が慢性頭痛、57.8%(95%信頼区間[CI], 55.5%-60.2%)の頻度
民間人では、慢性頭痛頻度は軽症TBI 75.3% (95% CI 72.7%-77.9%)、中等・重症TBI 32.1%(95% CI, 29.3%-34.9%)
20の研究3289名のTBIを有する民間人は慢性疼痛頻度は51.5%(95% CI, 49.8%-53.2%)
3研究にて917名の退役軍人を含むTBI評価にて疼痛頻度43.1%(95% CI, 39.9%-46.3%)
PTSDは慢性疼痛に影響を与えるが、頭部外傷は慢性疼痛と独立した相関を示すようである。
結論としては、慢性疼痛はTBIの頻度の高い合併症であり、PTSDやうつのような心理的疾患とは独立しており、脳へのminor injuryが明らかな患者で多い。
心理的問題ではない、なんらかの器質的プロセスも、示唆されることは確かであるが、特定の疾患概念決めつけに暴走することだけは医療側も荷担してはならないとおもう。
この関連の記事は、圧倒的に毎日新聞の記事が多い。
この新聞社特有の決めつけが横行しているのだが・・・
むち打ち症:交通事故で被害、実は脳の髄液漏れ 加害者側相手、全国で訴訟相次ぐ
毎日新聞 東京朝刊/渡辺暖 2005年5月17日
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/news/20050517ddm041040122000c.html
毎日新聞問題はその裾野が広い・・・と思う・・・メディアは毎日を含め、科学的裏付けがないのに、意図を持ってミスリードをしかける・・・という認識を、一般国民がもつことが大事だ
by internalmedicine | 2008-08-13 08:38 | 中枢神経