致死的状態の広汎肺塞栓に対するカテーテル治療

in extremis
1. 〈ラテン語〉極限状態で、ぎりぎりの所で、瀬戸際で、苦境に立って、非常のときに

2. 〈ラテン語〉死の間際{まぎわ}に、死が近づいて


この研究でのクライテリアでは、in extremis 肺塞栓とは、”広汎な肺塞栓で血行動態ショック(ショック指数≧0.9)”の患者である。

重症の肺塞栓に対するカテーテルによる血栓除去は実にスリリングな状況下の治療・・・特に、昨今の医療をとりまく環境下では医療側はこの病態を念頭に置いて、発生時の対処法を整備しておく必要があろう

Catheter-Directed Embolectomy, Fragmentation, and Thrombolysis for the Treatment of Massive Pulmonary Embolism After Failure of Systemic Thrombolysis
(Chest. 2008; 134:250-254)

in extremis massive pulmonary embolism (PE) の標準治療は全身の血栓溶解療法であるが、カテーテルによるインターベンション(CDI)の有用性は不明
CDIによる吸引血栓除去・fragmentationをカテーテル血栓溶解の有無において検討
12名をCDI治療
7名の男性、5名の女性、平均年齢56歳、年齢範囲21-80歳
7名(58%)はTPA 100mgの全身投与を受け、5名(42%)は血栓溶解療法全身投与禁忌であった。

カテーテルによる直接血栓fragmentationと血栓除去を全例で行い、8例(67%)を追加でカテーテルガイド下血栓溶解療法を行った

技術上の成功は12/12(100%)

大きな施行合併症なし(0%)

有意な拮抗動態の改善(shock index, <0.9) が10/12(83%)で認められる。残り2名は24時間以内に心停止で死亡。10名は生存し、安定退院(平均期間20日間、3-51日間)


Massive pulmonary embolism (PE)は急性右室不全・心原性ショックによる高頻度早期死亡率を生じる。診断を疑ったら、血栓溶解療法に移らなければならないのだが、診断の難しさと、治療確実性の問題が伴う。カテーテル・手術による血栓除去は急激に病態悪化を改善する可能性があり、カテーテルによる治療が、手術不能例や困難時特に注目されている。
Catheter Embolectomy for Acute Pulmonary Embolism (Chest. 2007; 132:657-663)

血栓溶解薬mutant t-PA(モンテプラーゼ)が2005 年度より肺塞栓症に対しても保険適用されているが、注意点の多い薬剤である。
クリアクター
●不安定な血行動態を伴う急性肺塞栓症における肺動脈血栓の溶解
効能又は効果に関連する使用上の注意
1.急性肺塞栓症の診断は肺動脈造影などにより、血栓、塞栓あるいは血流の障害を確認すること。実施が困難な場合は、臨床症状から不安定な血行動態を伴う急性肺塞栓症が強く疑われ、かつ、低酸素血症、右心負荷の増大などの検査所見を確認した患者に対して投与すること。

2.急性肺塞栓症においては、ヘパリン投与などによる抗凝固療法を基礎治療として行うこと。





ref.)
やや広範囲の肺塞栓症患者に対するヘパリンとアルテプラーゼの併用投与
Heparin plus Alteplase Compared with Heparin Alone in Patients with Submassive Pulmonary Embolism
N Engl J Med. Vol.347:1143-1150 Oct 2002


tPAが脳血管疾患における適用の知識は今や必須だろう
特に、静注用遺伝子組換えt-PA製剤であるアルテプラーゼは、メディアでも再三取り上げられており、患者サイドからの圧力も予想される。
http://www.jsts.gr.jp/img/rt_PA_Q&A.pdfも参照すること)
アルテプラーゼ静注適応と除外基準(http://www.is-brain.com/column/01.html)
1.発症3時間以内
2.あまり重症でなく、軽症でもない、NIHSS(National Institute of Heart Disease Stroke Scale)で5-22点
3.CTで広範な低吸収域がでていない。


以下の項目のうち、ひとつでもあれば禁忌になります。
① 3ヶ月以内の脳梗塞
② 3ヶ月以内の重症頭部外傷、脊髄損傷
③ 21日以内の消化管出血、または尿路出血
④ 14日以内の大手術
⑤ 痙攣をきたした。
⑥ 脳出血がある、動脈瘤など合併している。
⑦ 収縮期圧185mmHg以上
⑧ 拡張期圧110mmHg以下
⑨ 血糖50mg/dl以下または血糖400mg/dl以上
⑩ 血小板数が10万以下
⑪ PT-INR で1.7以上
⑫ 重症肝障害
⑬ 急性膵炎併発

by internalmedicine | 2008-08-23 08:56 | 内科全般  

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