急性皮膚創傷の治療方法

"ガーゼ”や"消毒”に関する誤った使用法というか、一律なやり方が一般的に流布されて、"キズドライ”のような製品まで販売されるに至った。私の記憶が確かなら2000年以降、縫合優先、ガーゼの利用、消毒頻回・創傷部位乾燥強制、破傷風の未認識などという治療法は一般には駆逐されたはず・・・?

NEJM名物となった、"Management of Skin and Soft-Tissue Infection”(http://content.nejm.org/cgi/content/full/359/10/1063)の公開症例検討会が上げられている。

それに先立ち、臨床的レビュー
 ↓
Current Management of Acute Cutaneous Wounds
N Engl. J Med. Vol.e 359:1037-1046 Sep, 4, 2008
General Principles of Careのところだけ抜き書き
創傷マネージメントについて作者たちのアプローチについて書かれたもので、推奨は、できる限りランダム化トライアルに基づくが、推奨レベルに関しては小規模、観察研究、専門家の意見が多く、この推奨と不一致面も多いと認識している。このアプローチが実地的で有用であると考える。

創傷マネージメントの主要目標は"to achieve rapid healing with optimal functional and aesthetic results”(機能と美容の最適性をもたらす迅速な治癒をもたらすこと)

感染予防や更なる損傷予防、創傷治癒の適切かをもたらす環境整備を行うことに最善をつくすことである。

創傷においてはすべて水道水や生理食塩水で完全に洗滌すること。汚染がひどい場合は、高圧洗滌(>7 psi)をsplatter shieldを有する10-50mlのシリンジを用いておこなう。

"Wound Irrigation System"等で検索すると、同様なデバイスが検出される


(Early Wound Irrigation Improves the Ability to Remove Bacteria The Journal of Bone and Joint Surgery. 2007;89:1723-1726.)


NEJM subscriber → http://content.nejm.org/cgi/content/full/359/10/1037/DC1

破傷風ワクチン状態を評価し、標準推奨に従い予防措置を行う


創傷の湿潤環境が細胞の乾燥を予防し、コラーゲン合成、血管合成を刺激することで治癒を促進し、美容状の改善・疼痛軽減をもたらし、感染リスクを減少させ、医療費を削減につながる。

湿潤環境は局所的抗菌剤による創傷部をカバーし、蒸発による水分喪失を減少させるため閉鎖的なドレッシングを行う
待機的手術による創傷(JAMA 1996;276:972-977.)とは違い、局所的薬剤は外傷性裂創の感染率を減少させている(Acad Emerg Med 1995;2:4-10.)。閉鎖的ドレッシングは、感染を減少させている(Wounds 1989;1:123-33.)。
OTCの "cyanoacrylate liquid bandages”(参照:http://www.emedicine.com/ent/TOPIC375.HTM)は、きれいな、単純性外傷に有効(Dermatol Surg 2002;28:263-267.
(訳注:ちょっと気になることがある:シアノアクリル酸系の瞬間接着剤の成分はシアノアクリル酸メチル、-エチル、-ブチルである。接触皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息を起こすことがある。(http://www.drugsinfo.jp/2007/08/16/page/2))



ドレッシングの選択は、原因、サイズ、深さ、部位、浸出物の程度、汚染状況、コストによる。


局所的抗菌剤
・Silver sulfadiazine
・Mafenide acetate
・Bacitracin
・Mupirocin
・Triple antibiotic


非吸収性ドレッシング
・Impregnated, non-adherent
Xeroform,Adaptic,Vaseline gauze, 利点:疼痛少なく安価、欠点:抗菌作用なくmessy、適応:表層性熱傷や擦過創、裂創)

・Nonabsorptive polyurethane film
OpSite、Tegaderm、利点:疼痛少なく透明、欠点:浸軟、適応:小擦過創、乾燥表層性熱傷

・Silver-impregnated dressing
Anticoat、Actisorb、Aquacell、利点:広範な抗菌効果・疼痛軽減、欠点:高価・湿潤を意図的に保持する必要、適応:熱傷

・Silicone:
Mepitel、利点:疼痛軽減・滲湿状態観察、欠点:高価、適応:熱傷、深い擦過創


・吸収性ドレッシング
・Hydrocolloids
DuoDERM、Tegasorb、利点:疼痛軽減、欠点:悪臭・不透明、適応:滲出性熱傷、深い擦過創、皮膚裂創

・Hydorgels
Aquasorb、Vigilon、Curagel、GlexiGel、利点:乾燥創傷部位の再湿潤化、適応:滲出性熱傷、深い擦過創、表面の固い表層滲出性

・Alginate
利点:滲出液吸収、欠点:頻回にドレッシング交換必要・研究が少ない、適応:滲出性熱傷



ドレッシング選択における臨床的に直接のエビデンスがあるわけではない。
閉鎖性ドレッシング(Occlusive dressing)は、局所構成座やガーゼドレッシングに比べ、疼痛が少なく、患者に便利で、治癒速度も速い。しかし、特定の環境では、よりコスト効果的でない場合もある。湿潤環境下ドレッシング(Wet dressing)は、組織の湿潤を促進するが、それでバクテリアの増殖をもたらすことは避けなければならない。予防的全身投与はルーチンに用いられるべきではない。

例:Treatment of a Category I Skin Tear of the Dorsal Forearm.
A. Category I skin tea of dorsal forarm
B. Syringe with splatter shield used to irrigate wound
C. Skin flap gently repositioned using gauze pad
D. Surgical tape applied skin flap
E. Nonadherent dressing and tubular gauze applied

by internalmedicine | 2008-09-04 11:02 | 医療一般  

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