寒冷感受性TRPM8変異発現:COPD・喘息などの寒冷悪化の病態の説明?
2008年 09月 18日
Human Lung Epithelial Cells Express a Functional Cold-Sensing TRPM8 Variant
American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology. Vol. 39, pp. 466-474, 2008
いくつかのtransient receptor potential (TRP) ion channelは大気温度変化を senseし、反応する。そして、TRPチャンネルの化学的アゴニスト、メントールやカプサイシンを含め気温変化の感覚をもたらす。
TRPM8は、寒冷、メントール感受性イオンチャンネルで温度・化学的刺激を神経シグナルに変え、cooling/coldの感覚をもたらす。
しかし、非神経細胞や組織におけるTRPM8受容体の発現・機能は未だ未知の領域
ヒト気管支上皮細胞のTRPM8不完全変異について記載
TRPM8変異の発現をRT-PCR、クローニング、免疫組織染色で示し、受容体機能はプロトタイプのTRPM8アゴニスト、メントール、気温18度にさらされた細胞により特徴づけられる。
TRPM8変異は、まず気管支上皮小胞体膜内で発現され、活性化はthapsigarginで減衰し、細胞通過型TRPM8アンタゴニストであるN-(4-tert-butylphenyl)-4-(3-chloropyridin-2-yl)piperazine-1-carboxamideで減衰、そして、shRNA誘起性TRPM8発現の抑制をもたらす。肺
細胞内のTRPM8変異の活性化が、炎症性サイトカインのIL-6、IL-8と相まって促進。
この所見はTRPM8変異受容体が、冷気による呼吸器生理的状態の異常をもたらし、喘息による呼吸器冷気過敏状態の説明に一部なるのかもしれないという考察
TRP(transient receptor potential)は,受容体活性化カチオンチャネル(receptor-activated cation channel: RACC)の分子的実体として注目されていたが,最近では浸透圧,温度,酸化還元状態の変化など様々な外的要因にも応答し活性化されることもわかってきた.また,遺伝子欠損細胞などを用いた解析から,TRPチャネルは他の生体分子と機能的なシグナル複合体を形成し,自身のチャネル活性やCa2+流入によって惹起されるシグナル伝達を効率よく制御しており,増殖·分化や生存·死といった細胞応答を制御することが明らかになってきた.(http://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/121/4/121_223/_article/-char/ja)
Transient receptor potential (TRP)チャネルと咳嗽
日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)131,417~422(2008)(pdf)
・気道平滑筋細胞のCa2+流入経路
・喘息とCOPD の病態生理におけるTRPV1 とTRPV4 の関与

by internalmedicine | 2008-09-18 15:23 | 呼吸器系