小児救急トリアージ:マンチェスタートリアージシステム

“小児救急のManchester triage system”は UK、ヨーロッパ、オーストラリアで一般的
カナダではPedCTAS(参考)などがある。
米国との違いは(Pediatric emergency care 2003, vol. 19, no4, pp. 285-290)は状況によりばらつきが多く、統一されてない。

日本でも、“小児トリアージ緊急度判定ガイドライン”策定の動きがあるようだし、一部、先行している地域もあるようである。


Emergency Triage Second Edition

救急部門では患者の優先度を選別するシステムが要求されている。トリアージは迅速性が必要で、長期間安全に待てる患者、救急治療の必要性のない患者などを選別する必要がある。実際の待ち時間に関連するcategory of urgencyはEDの質測定に使われることもある。

看護師の主観的なトリアージは感度・特異度が低い(Adams SL, Fontanarosa PB. Triage of ambulatory patients. JAMA 1996;276:493-4)ので、トリアージシステムの開発評価が必要である。

Manchester triage systemは、専門家の意見に基づく5つのカテゴリーからなるシステム
Does the Manchester triage system detect the critically ill? J Accid Emerg Med 1999;16:179-81

成人ではこのシステムの信頼性は評価されている。

小児救急の分野での方法がまだ十分評価されてなかったということ



Manchester triage system in paediatric emergency care: prospective observational study
BMJ 2008;337:a1501

【参加者】オランダでの検討で、13ヶ月(大学病院)と7ヶ月(教育病院)の救急部門(ED)に及ぶ17600名の(年齢<16)受診者

【介入】コンピュータ化Manchesterトリアージシステムを用いた看護師のトリアージ16 735/17 600 患児 (95%) :提示問題からのフローチャートに組み込まれた識別しでの選択によるもの

看護師による緊急性レベルover-ruleは小児で1714(10%)で、解析から除外
参照標準の完全なデータでないもの1467(9%)

【主要アウトカム測定】Manchesterトリアージシステムによる緊急性比較
5つの緊急段階参照標準を事前定義、独立して評価
この参照標準はバイタルサイン、生命危機状態の可能性、診断リソース、治療介入、フォローアップを含むものである
高度緊急性(中間~非常に緊急性の高い状態)の感度、特異度、尤度と年齢・フローチャート使用・識別因子の95%信頼区間

【結果】 Manchester緊急指標値は参照標準と一致(患児 4582 / 13 554 (34%)、over-triage 7311(54%)、under-triage 1661(12%)
高度緊急性:尤度比3.0(95%信頼区間 2.8-3.2)
低緊急性:尤度 0.5(0.4-0.5)

内科的問題:尤度比 2.3(2.2-2.5)
外傷:12(7.8-18.0)
若年児:
0-3ヶ月:2.4(1.9-2.9)
8-16歳:5.4(4.5-6.5)



Reliability and validity of the Manchester Triage System in a general emergency department patient population in the Netherlands: results of a simulation study
Emergency Medicine Journal 2008;25:431-434; doi:10.1136/emj.2007.055228



日本では、患者・家族サイドの要求レベルが高く、見逃しを許容しない・・・非科学的・情緒的要求があるのだが・・・このため感度のみを高くしたシステムとなり、結果的に現場に負担だけをかけるシステムになるのではないかと・・・危惧する。

感度・特異度などを理解させ、効率という概念があることを国民に理解させなければ、何をやっても医療は崩壊する。

by internalmedicine | 2008-10-03 11:44 | 医療一般  

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