UPLIFT:スピリーバ

COPD患者への吸入抗コリン剤は心血管死、心筋梗塞、卒中リスク増加  2008-09-24 ってことで、スピリーバに心血管系リスクの疑いがかかられ、そのためべーリンガー株式会社が待ちに待った報告である。


   ↓
UPLIFT研究

4年研究で他施設多国(37ヶ国)ランダム化二重盲検プラセボ対照平行群トライアル

・ SPIRIVA(HandiHalerによるtiotropium 18μg  vs. Placebo(HandiHalerマッチ化プラセボ)で、トライアル中の治療群にて全ての呼吸器系処方薬、抗コリン剤補正にて比較
・現行喫煙者は禁煙プログラム提供



発表があったようだが・・・有害性がプライマリエンドポイントでないし、イベント率から考えて・・・どうも完全にシロとはいえないような・・・気もするが、JAMAのメタアナリシスには薬剤のunderuse例が多く含まれていたというべーリンガー側の意見も納得できるものであった。そして、メタアナリシスとしてはfunnel解析や感度分析がpoorでやや粗雑すぎるようで、少々お騒がせすぎたのではないか・・・JAMAエディター

Endpoint
・プライマリエンドポイント:FEV1(トラフとピーク)の時間推移
・セカンダリエンドポイント:
・死亡率(全原因、下気道)
・副事象
・急性悪化
・急性悪化のための入院
・プライマリエンドポイント以外のスパイロメトリー評価
・St. George's Respiratory Questionnaire




問題の副作用イベント
致死的イベント:
On-Treatment 比較: Titropium  381(12.8%)、Placebo 411(13.7%) 、Hazard比 0.84(95%CI P値 0.016)


臓器別:
総致命的イベント:Tiotropium 381 (12.8%) vs プラセボ 411(13.7%)
心臓疾患:24(0.8%) vs 26(0.9%)
全身:58(1.9%) vs 71(2.4%)
悪性新生物:37(1.2%) vs 45(1.5%)
下気道:131(4.4%) vs 141(4.7%)


卒中:Tiotropium 82/2986(100人年 0.88) vs プラセボ 80/3006(100人年 0.93) リスク比 0.95(95%CI 0.70-1.29)

心筋梗塞:Tiotropium 67/2986(100人年 0.71) vs プラセボ 85/3006(100人年 0.98) ハザード比 0.73(0.53-1.00)



えーと、本来の目的の結果は、ケアネットで翻訳されていた
 ↓
http://www.carenet.com/pulmonol/ers2008/interview01.html
プライマリエンドポイント
 ↓


おそらく、製薬会社が強調したがってる →"有意な死亡率の低下が初めて認められる”


NNT(4年)100の世界なのだが・・・そんなに強調してよいものだろうか・・・


いずれにせよ、プライマリエンドポイント以外のサブ解析で結論づけた話をする解説や、検討論文の不十分なメタアナリシスが一流雑誌に紛れ込む事実など・・・・判断は慎重でなければならないと改めて感じる昨今のスピリーバを巡る話題である。

by internalmedicine | 2008-10-06 16:26 | 呼吸器系  

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