EBMジャーナル最終号:EBMの行く末への不安
2008年 10月 11日
http://www.nakayamashoten.co.jp/ebm/
2度ほど掲載させていただいた雑誌で、感慨深いものがある。
最終号のエディトリアルに、名古屋第二赤十字病院救急・総合内科の野口善令先生が、「我が国にEBMの一定の普及をみた現在、本誌の役割は一応終了したと考えたい」と廃刊の理由を書かれている。
最終号の冒頭の記載は以下のごとく書かれている。
「来し方行く末をを俯瞰すればEBMは決して完成された分野でなく、将来への問題は山積みである。筆者の感じる最大の問題は、EBM(あるいはEBMという言葉)は権威化したのではないということである。たとえば、いろいろな領域で「EBMに基づいた○○」というタイトルの書籍、文献を良く目にする。・・・「・・・権威だから自他がいなさい」というメッセージが隠れているようで、EBMの精神との間に大きな齟齬を感じる」と書かれている。
最近はメタアナリシスだと、なにかしら文句を言えないという雰囲気を加味し出す。
9月24日JAMA(http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/300/12/1439)という雑誌に掲載されたスピリーバのメタアナリシスの有害性の報告はまさにそうで、情報ソースの選別がおかしく、スピリーバほとんど使用されてない場合が大きく影響を与えており、今週のNEJMで発表されたUPLIFTと相反する結果になったのは当たり前。
感度分析やフンネル解析くらい義務づけるべきだろ・・・JAMA・・・こういう雑誌でもメタアナリシスを理解できてない編者がいるという裏付け?
そして、
このUPLIFT(http://www.upliftcopd.com/HCP/results/summary/index.jsp)ではプライマリエンドポイントはさほど大した結果ではないのに、薬剤メーカーと呼吸器学会の権威者がまるで安全性をプライマリエンドポイントであったかのような情報提示・・・そういう解釈されたものを一般の医家は提示され、一般診療を行うこととなるのだ。
EBMは権威化されるべきものではないという、Dr. Sackettの言葉を無視して、「EBM」を冊子的に、権威的に、クックブック的に・・・世間が利用しはじめている。
本格的EBM啓発雑誌が廃刊になることは非常に悲しいことである。
by internalmedicine | 2008-10-11 09:17 | 医療一般