米国でのプラセボ治療の実態

一般の外来、特に、院外処方では不可能な診療方法だが、乳糖を服用させたり、生理食塩水を注射することのみが、プラセボ治療じゃない。上気道炎をしつこく訴える場合に対症療法薬に抗生剤処方を追加したり、全身倦怠を訴える患者にビタミンを処方することも”プラセボ治療”と考えられるので、一般的が外来でも無縁でないプラセボ治療。

この論文の序文では、プラセボ治療のterminologicalな困難さに言及がある。もともと概念のスタンダードがないということだが、ここでは、"placebo treatment" を ”a treatment whose benefits (in the opinion of the clinician) derive from positive patient expectations and not from the physiological mechanism of the treatment itself”としている。


プラセボ治療というのは倫理的議論があり、臨床的アウトカムとしてはpositiveに認められているが、既知の特性・メカニズムという訳ではない。期待効果として説明されている。
1960年以前は、”inert substance”を投与してプラセボ効果を期待して用いられてきたこともあった。
薬物介入の発展、インフォームド・コンセントが強化され、プラセボ治療が批判の的となった。
プラセボ処方そのものが、詐欺であり、患者のautonomyを侵害し、インフォームド・コンセントを阻害するものとされた。プラセボ治療擁護側は、多くの慢性疾患で有用で、偽り無しに完遂できると主張の報告もある。
「"inert" agent」として、この論文では報告しているが、糖錠や生食注射などは薬理学的活性は無しもしくはあったとしても軽度である薬剤をプラセボ治療として使うだけでなく、ビタミンや抗生剤などのphysiologicalに活性のある薬剤でも、心理的効果を期待して投与することがある。薬理学的効果とプラセボ効果を同時に期待する臨床家も多い。



Prescribing "placebo treatments": results of national survey of US internists and rheumatologists
BMJ 2008;337:a1938 Published 23 October 2008, doi:10.1136/bmj.a1938
米国・横断的研究で、1200名の内科医・リウマチ医を対象とした自己報告

回答679名の医師で、57%の回答率
約半数が内科・リウマチ
regular basisのプラセボ治療処方は46-58%と回答
多くの医師399名、62%は倫理的に許容されると思っている。
プラセボ治療として生食(18.3%)と糖錠(12.2%)は少ない
直近1年間では、多くはOTC鎮痛剤(267名、41%)、ビタミン(243,38%)であった。
小数だが、抗生剤使用と報告したもの86名、13%、sedative86名、13%であった。
さらに、プラセボ使用する医師の多く(241名、 68%)は有益な医薬品として患者に処方し、通常の病態では用いない治療法としてプラセボを用いる。プラセボとして明示的に処方する場合も稀ながら存在する(18名、5%)

by internalmedicine | 2008-10-31 09:56 | 内科全般  

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