男性動脈硬化:ビタミンEとC予防効果なし むしろ、ビタミンEは出血性脳血管イベント増加
2008年 11月 10日
ビタミン・サプリメントの無益性と有害性は次第に明らかだったが、今回、男性ということも同時に重要な報告である。
Vitamins E and C in the Prevention of Cardiovascular Disease in Men: The Physicians' Health Study II Randomized Controlled Trial
JAMA published 9 November 2008, 10.1001/jama.2008.600
【概要】 基礎研究・観察研究からビタミンEもしくはビタミンCが心血管疾患減少に関わることが示唆されているが、長期トライアルにおいては心血管疾患低リスクに男性で評価した報告は少なく、 男性においては今までビタミンC単独での心血管疾患予防トライアルすら存在しない
【目的】 長期ビタミンEもしくはビタミンCサプリメント投与により主要心血管イベントを男性で減少させるかどうか評価
【セッティング・参加者・デザイン】 Physicians' Health Study II は、ビタミンE・ビタミンCのランダム化、二重盲検、プラセボ対照化要素トライアルで、1997年開始、2007年8月31日まで予定完遂したもの
14641のUS男性医師が対照者で、トライアル参入時50歳以上、ランダム化時754名は明かな心血管疾患を有していた
【介入】 ビタミンE 400I隔日でビタミンC500mg連日
【主要アウトカム測定】 主要心血管イベント複合エンドポイント(非致死的、非致死的卒中、心血管疾患死亡)
【結果】 平均8年間フォローアップで、1245の確定主要心血管イベント発生
プラセボ比較で、ビタミンEは以下のイベント発生に関して効果無し・主要心血管イベント ( active と placebo vitamin E 群, 10.9 イベント / 1000 人年; ハザード比 [HR], 1.01 [95% 信頼区間 {CI}, 0.90-1.13]; P = .86
・ 総心筋梗塞 (HR, 0.90 [95% CI, 0.75-1.07]; P = .22)
・ 総卒中 (HR, 1.07 [95% CI, 0.89-1.29]; P = .45)
・ 心血管死亡率 (HR, 1.07 [95% CI, 0.90-1.28]; P = .43)
ビタミンCでも以下のイベントで有意な効果無し主要心血管イベント ( active と placebo vitamin E 群; ハザード比 [HR], 10.8 、 10.9 イベント/ 1000 人年y; HR, 0.99 [95% CI, 0.89-1.11]; P = .91)
・総心筋梗塞 (HR, 1.04 [95% CI, 0.87-1.24]; P = .65)
・総卒中(HR, 0.89 [95% CI, 0.74-1.07]; P = .21)
・心血管疾患死亡率 (HR, 1.02 [95% CI, 0.85-1.21]; P = .86)
ビタミンE (HR, 1.07 [95% CI, 0.97-1.18]; P = .15)もビタミンC(HR, 1.07 [95% CI, 0.97-1.18]; P = .16) も総死亡率に有意な影響を与えず、しかし、ビタミンEは出血性卒中のリスクを増加させる (HR, 1.74 [95% CI, 1.04-2.91]; P = .04)。
【結論】 男性医師を対象とした大規模、長期トライアルで、ビタミンE、ビタミンCサプリメントは主要心血管イベントのリスクを減少させなかった。このデータにより中年以上の男性に対して、ビタミンサプリメントによる心血管イベント予防効果を支持することはできなかった。
ビタミン・サプリメントの有害事象の報告が相次いでいる。
ビタミンサプリメントは肺がんリスクを減少するどころか増やす可能性がある 2008年 03月 03日
高用量ビタミンEは寿命を短くする 続編 2004年 11月 17日
・・・・
いろいろ紹介したが・・・
10分ビタミン点滴ビジネス (2008年 06月 19日なる事業やエーザイのユベラNカプセルなどは未だに、高血圧・高脂血症の健保適用病名を有している。
サプリメント経由のビタミン補給というのは実に問題が多いという情報が広く必要があるのだが、厚労省は特定保健用食品にビタミンサプリメントを含めてるくらいだから行政に期待はできないだろう(「栄養機能食品(ビタミンC)・・・)<認可機関が天下りの巣となり、血液さらさらなど悪の大元になってるので・・・>。特定なんたらは作用機序に合理性があれば・・・OKという、EBMの世界に逆行した認定が未だになされている。有害性そのものだと思うのだが、役人の懐事情でいろいろあるのだろう・・・
by internalmedicine | 2008-11-10 08:22 | 動脈硬化/循環器