Chromogranin Aは長期死亡率、心不全再入院の独立した予測因子となりえる


Chromogranin A (CgA) は 439 アミノ酸, 49 kDa polypeptideで内分泌、神経系で同定されている。神経内分泌腫瘍、褐色細胞腫やカルチノイドなどで著増し、CgAの臨床的応用はそのような腫瘍の診断、フォローアップに限られていた。しかし、血中CgA値は副腎髄質・末梢神経末端における交感神経活動性増加と相関し、CgAが神経内分泌シグナルをintegrateする可能性があり、神経内分泌活性の全般的指標として用いられる。さらに、CgAの心筋産生は拡張型・肥大型心筋症でみられることが示され、慢性心不全、心筋梗塞後心不全の臨床的重症度と相関していることが示されている。



CgAがACSにおいて、長期死亡率、心不全再入院の独立した予測因子となりえる

Prognostic value of circulating chromogranin A levels in acute coronary syndromes
European Heart Journal 10.1093/eurheartj/ehn513
1268名(年齢中央値67歳、70%男性)のACS患者のday 1でのCgA値
通常のリスク要因としてのCgAのメリットを評価
92ヶ月フォローアップ中央値で、389名(31%)が死亡
ベースラインCgA濃度は長期死亡率と相関 [ハザード比/1SD 対数変換CgA値: 1.57 (1.44–1.70), P < 0.001]、同様に心不全入院[1.54 (1.35–1.76), P < 0.001]、心筋梗塞(MI)再発 [1.27 (1.10–1.47), P < 0.001]。だが、卒中では有意な相関無し。
通常の心血管リスクマーカー補正後、やはり死亡率y [hazard ratio 1.28 (1.15–1.42), P < 0.001]、心不全[hazard ratio 1.24 (1.04–1.47), P = 0.02],に相関あり、だが、MI再発には相関無し






Chromogranin A は分子量49 kDa の酸性糖タンパク質で,神経内分泌細胞に広く発現しており,その分泌顆粒内に存在しています。また,小腸,大腸,副腎髄質,ランゲルハンス島など,体内のあらゆる場所に分布しています。Chromogranin A はカルチノイド腫瘍,褐色細胞腫,傍神経節腫や,その他の神経内分泌腫瘍の有用なマーカーとして知られており,最近の論文では膵臓癌のマーカーとなる可能性も示唆されています。
https://www.funakoshi.co.jp/news/080815spdf/080815s_p12.pdf

Chromogranin Aは14番染色体に位置し、この領域は統合失調症の発症にかかわる有力な遺伝子座位であることが示されている(Bailer et al., 2000 ; Chiu et al., 2002 ; Segurado et al., 2003)。中枢神経系に広く分布し、神経伝達物質と共分泌されるが,その生理学的作用としてはtrans-Golgi networkにおける分泌タンパクの凝集 (Taupenot et al., 2003)と分泌顆粒の新生に関与している (Kim et al., 2001)ことが知られている。このため,Chromogranin Aの機能不全によってシナプスの機能不全を生じ,結果として精神疾患の発症に至る可能性が想定される。この例として,慢性統合失調症患者の脳脊髄液中のChromogranin A の低下(Landen et al., 1999),および死後脳におけるChromogranin A 抗体陽性細胞の減少(Iwazaki et al., 2004)が報告されている。
また,近年の分子生物学的研究により, AKT1-GSK3β系,MAP kinase カスケード, IP3-Ca2+系などの細胞内シグナル経路が精神疾患に関与していることが提唱されてきている (Emamian et al., 2004 ; Manji , 2004)。 IP3-Ca2+経路はセロトニン受容体からのシグナル伝達において重要な役割を果たしていることが知られているが,近年,この経路がドパミン受容体からのシグナル伝達にかかわっていることが示されてきている (Trantham-Davidson et al., 2004)。さらに,小胞体からのCa2+の放出 にはChromogranin A が必要であることが報告され(Yoo et al., 2000), Chromogranin A が精神疾患の発症に関与している可能性が考えられる。
さらに,Chromogranin A はmicrogliaを活性化し,cytotoxins の放出を促進することでneurotoxic な作用を有することが知られており(Taupenot et al., 1996; Taylor et al., 2002),Alzheimer’s病の老人班およびβ-amyloid plaques (Lechner T et al., 2003), Lewy小体症の Lewy body およびPick病の風船細胞 (Yasuhara et al., 1994)に蓄積されていることが示されている。薬物依存によってprefrontalおよびその他の脳領域の萎縮が生じることが確認されており(Pascual-Leone et al., 1991; Pezawas et al, 1998),覚醒剤使用障害の脳萎縮にもChromogranin A の関与している可能性がある。(http://www.ncnp.go.jp/ikiru-hp/report/kunugi16/kunugi16-6.pdf


心尖部肥厚心筋症・たこつぼ心筋症の心筋シンチに使いたくなる・・・

by internalmedicine | 2008-11-25 09:46 | 動脈硬化/循環器  

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