β遮断剤種類別有効性に違いはあるか?

現実問題としては、心不全に対するβ遮断剤ってのはカルベジロールの独壇場と思うのだが・・・

”大規模臨床試験の結果,β遮断薬はその選択性,非選択性,虚血性,非虚血性心不全症例にかかわらず有効であることから,β遮断薬のクラス効果と考えられる”
と「慢性心不全治療ガイドライン(pdf)」には、以下の議論を超越(笑)して記載されている(ガイドライン作る場合、もうちょっと慎重な方がよいとおもいますよ・・・こうやって日本のガイドラインの権威はさらに低下するのであった)


Comparative Effectiveness of Different {beta}-Adrenergic Antagonists on
Mortality Among Adults With Heart Failure in Clinical Practice
Arch Intern Med 2008;168 2415-2421
【背景】ランダム化トライアルで収縮期性心不全への選択的β遮断剤の有効性が示されているが、臨床の場での異なるβ遮断剤の有効性の比較は十分認識されてない。

【方法】2001年から2003年までの心不全入院後の患者対象で、異なるβ遮断剤で死亡率比較
β遮断剤の長軸的曝露を薬局データベースで確認
患者特性と、他の薬物使用を管理記録、入院、外来、薬局データベースで確認
死亡は管理記録、state mortality、Social Security Administration databasesで確認
Multivariate Cox regressionで異なるβ遮断剤と死亡との相関を調査

【結果】11 326 名の心不全入院後の生存者成人において、7976名β遮断剤(atenolol, 38.5%; metoprolol tartrate, 43.2%; carvedilol, 11.6%; and other, 6.7%) 投与フォローされている
退院後12ヶ月間の死亡率(100人年あたり)はβ遮断剤の曝露・種類でばらつきがある
・atenolol, 20.1
・metoprolol tartrate, 22.8
・carvedilol, 17.7
・no β-blockers, 37.0

交絡因子・carvedilol投与傾向補正後
・atenololの死亡率は、metoprololに比べ高く (adjusted hazard ratio [HR], 1.16; 95% confidence interval [CI], 1.01-1.34) 、β遮断剤なしに比べても高い(HR, 1.63; 95% CI, 1.44-1.84)が、carvedilolに対しては異ならず (HR, 1.16; 95% CI, 0.92-1.44)
 ← 訳していて自信ないため原文参照してください

【結論】atenololと比較すると、補正死亡リスクは短期的作動薬剤であるmetoprolol tartrateで軽度高いが、心不全成人ではcarvedilolと有意差無し
この結果は注意深く評価されるべきで、広範囲スペクトラルなβ遮断剤を比較したreal-world settingなランダムトライアルが必要




この号のArchive of Internal Medicineでは老人へのβ遮断剤投与の是非の議論が掲載されている。
Comparative Effectiveness of β-Blockers in Elderly Patients With Heart Failure—Invited Commentary
Brian L. Strom
Arch Intern Med. 2008;168(22):2428-2431.

Comparative Effectiveness of β-Blockers in Elderly Patients With Heart Failure—Invited Commentary
Bertram Pitt
Arch Intern Med. 2008;168(22):2431-2432.

by internalmedicine | 2008-12-09 09:26 | 動脈硬化/循環器  

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