FTO遺伝子:小児エネルギー摂取増加と関連


NEJMによれば、FTO遺伝子は63%の人が持つ遺伝子で、ごく普通に存在する遺伝子。この遺伝子のvariantでは、Dundee大学で行われた100名のこども(4-10歳)で、よりsugarとfatを選ぶ傾向が強く、このことが健康より不健康な習慣を惹き起こすもトトとなると述べる。過食なしに肥満の原因となることのない遺伝子であり、食習慣を介して肥満に影響を与える遺伝子ということになる。


マスコミ各位には、多因子疾患や症候に対して”なんたら遺伝子発見”というのはそろそろ自重していただきたいものだ。臨床の場や厚生行政などに無用な混乱をももたらす。


肥満と関連する遺伝子は、メンデル性疾患関連遺伝子だって多く存在する。
食欲調整の神経内分泌メカニズムの重要性に基づき肥満の遺伝的エビデンスが検討されている。単一遺伝子にて説明できるのは小児の極度肥満の6%であり、leptin-melanocortin経の遺伝的欠損によるものであり、過食を伴うもの。候補遺伝子はより軽微な遺伝子変異が肥満のより多くに関与している可能性がある。その中で、FTOがより強力な肥満関連遺伝子とした挙上してきた(J Clin Endocrinol Metab. 2008 Nov;93(11 Suppl 1):S51-6.)。

well-powered scanにてゲノム全体を通して関連する遺伝子発見する技術により、2型糖尿病に対して、common variantを有するlocusがあり、さらにその一つにFTOが見いだされた( Nat Clin Pract Endocrinol Metab. 2008 Mar;4(3):156-63. Epub 2008 Jan 15.)。


A Common Variant in the FTO Gene Is Associated with Body Mass Index and Predisposes to Childhood and Adult Obesity
Science Magazine  11 May 2007  Frayling et al. , pp. 889 - 894


An Obesity-Associated FTO Gene Variant and Increased Energy Intake in Children
N Engl J Med Vol. 359:(24) 2558-2566 Dec. 11, 2008
rs9939609 A allele は体重増加 (P=0.003 , P=0.049) と相関し、BMIとも相関(P=0.003 , P=0.03)する。
intensively phenotyped subsampleで、A alleleはfat mass増加と相関する(P=0.01) が、lean massとは相関しない

総・安静時エネルギー消費量はA alleleのこどもで増加し (P=0.009 と P=0.03)、安静時エネルギー消費は、年齢予測値・体重にのみ特異的である。このことはリスク関連allelを有するこどもの肥満に対して代謝的adaptationの欠損はないことを示唆する。

A alleleは、体重と関連せず、エネルギー摂取増加と相関する。(P=0.006)

逆に、allelを持つこどもの食事摂取の量は、持たないこどものそれと同様(P=0.82)


FTO遺伝子変異は肥満研究としてgenomewide関連研究のシリーズとして行われている。
rs9939609の不均衡linkageのSNPS数とFTO遺伝子のfirst intronとして巨座していることが成人・小児の大集団で肥満との関連性が示されている。
肥満と関連しつつ、2型糖尿病との関連し、エネルギーホメオスターシスの中心的コントロールの役割をする遺伝子として、マウスでは弓状核でFTOが発現し空腹・食事の調整と関連するとされる。
FTOによりencodeされた蛋白は、2-oxoglutarate–dependent nucleic acid demethylase activityであったが、いまだ詳細は不明。






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by internalmedicine | 2008-12-11 08:55 | 糖尿病・肥満  

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