後期高齢者の心血管疾患・癌の頻度
2008年 12月 12日
要約
心血管疾患・癌の生涯リスクは100歳代でプラトーとなり、これは、疾患発見が少なくなり、疾患への抵抗性が増しており、個人・集団での疾患リスク予測に対して重要な要素であろう。
高齢者においては特に死亡競合リスクを調整する必要がある。筆者らの推測では、frailty(脆弱性)、要するに老衰などの要因が関与する可能性がある。80歳を超えての検討では、追加研究が必要となろう。
Incidence of cardiovascular disease and cancer in advanced age: prospective cohort study
BMJ 2008;337:a2467
【目的】 加齢に伴う、心血管疾患と癌の頻度と・余命リスクに与える影響を老人男性前向きコホートで検討(アメリカ)
【対象】 1982年22048男性医師(40-84歳で、主要疾患のない人)
【主要アウトカム】主要心血管疾患(心筋梗塞、卒中、心血管疾患死亡)と癌
【結果】23年間フォローアップにて、3252 の主要心血管イベントと5400の癌発生
主要心血管疾患頻度は100歳まで増加継続
80歳から、主要心血管イベントは死亡時診断と成りやすい
癌の頻度は80-89歳でピークその後低下。
検診にて発見した癌が、減少の主な理由で、検診発見されない多くの癌は100歳まで増加する
非補正累積頻度では心血管疾患を16%、癌を8.5%過剰見積もり
40歳時点の余命での癌リスクは45.1% (95% 信頼区間 43.8% ~ 46.3%)、90歳では9.6%(7.2% ~ 11.9%)
40歳での余命での心血管リスクは34.8% (33.1% ~ 36.5%) 、90歳時点では 16.7% (12.9% ~ 20.6%)
【結論】新規心血管疾患の頻度は80歳後増加し続け、死亡時診断として多くなる。
癌は発症率後年減少するが、それは検診による発見が少なくなるためであろう。
この所見は80歳以上の老人で未診断疾患を実質有する人達が多いことを示唆する。
両疾患の余命時リスクは10年でプラトーに到達している。これは疾患発見、症状報告、疾患への抵抗性の増加など要因だろう。高齢者の疾患リスクの正確な推定は死亡リスクを完璧に補正しなければならない。
年齢特異的粗頻度(癌全体、各癌サブグループ)
累積癌・主要CV疾患補正死亡リスク:40歳から疾患なしの過程で推定した累積予測頻度
日本でもこういう報道があるが、議論盛り上がらず
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夢の田舎暮らしと現実のはざまで 山梨の自殺幇助事件
http://www.asahi.com/national/update/1209/TKY200812080386.html
by internalmedicine | 2008-12-12 14:21 | 動脈硬化/循環器