運動不足の人への運動処方は有効 但し、転倒・外傷は増えるよ

運動処方というのは、基礎疾患(四肢運動・神経・心肺・腎臓・代謝・・・・など)の疾患や個人の特性、地域的特性(交通量や利用できる社会的リソースなど)により個別化すべきだろうと思う。ただ、ほとんどの人達にはある程度一般的指導だけでよいのではないか。ただし、運動のリスクに関しても指導しなければ、せっかくの運動の効用が台無しになる。

もともと運動不足の人への運動処方が成功するかどうか・・・実地論文

Exercise on prescription for women aged 40-74 recruited through primary care: two year randomised controlled trial
BMJ 2008;337:a2509 (Published )
【目的】2年間において、比較的日常不活動女性における処方上のプライマリケアベースの運動プログラムの有効性

【デザイン】 Randomised controlled trial.

【セッティング】 17 primary care practices in Wellington, New Zealand

【被験者】 40-74歳の1089名の女性
中等度強度運動30分間、少なくとも週5日

【介入】9ヶ月間の、6回のフォローアップ訪問と月ごとの電話サポート身体運動介入ブリーフィング

【主要アウトカム測定】 ベースライン、12、24ヶ月の身体活動性評価
二次アウトカムは、QOL(SF-36)、体重、ウェスト経、血圧、血中空腹時脂質農道、HbA1c、血糖、インスリン、身体フィットネス

【結果】 平均年齢58.9(SD 7)歳
トライアル持続率(retention rate)は、12ヶ月で93%、24ヶ月で89%
ベースラインにて、中等度強度身体運動150分という目標に到達していた割合は、介入群の10%、対照群の11%。それが、12ヶ月で、43%、30%と増加し、24ヶ月で、39%、32.8%と増加した (P<0.001)。

介入群で、対照群比較すると、SF-36身体運動機能(P=0.03)とmental health (P<0.05)スコア改善
だが、role physical scoreは有意に低い(P<0.01)
臨床的アウトカムは有意な差異無し
転倒 (P<0.001)と外傷 (P=0.03の増加)が介入群で見られた

【結論】 2年における、処方運動プログラムは身体活動性を増加させ、QOL向上に役立つ
しかし、転倒や外傷も増加する。

この所見は、身体不活動を減らすための一般住民への戦略として、運動処方プログラムの使用を支持する報告である。




ところで・・・


特定健康指導が始まっているが、成功報酬支払いってのが斬新(皮肉を込めて・・・)
逆に、失敗したときや、その指導による外傷などの副事象はだれが責任をとるのだろうか?

生活習慣病予防(健康づくり)特集 運動施策の推進


指導を受けた後、怪我(どこかの総理大臣は”カイガ”と呼びそうだが)したとき、国にその損害賠償を請求してみたらどうだろう

もっとも、既に現場責任転嫁対応済みである
 ↓
運動・身体活動を指導する際のリスクマネージメント
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/02/s0219-4c.html

しかも、根拠が見あたらないのに・・・“リスクの把握の方法は、「標準的な健診・保健指導プログラム(暫定版)」P45の標準的な質問表で対応が可能”と・・・あまりに無責任・非科学的・・・
こんなおっそろしい制度・・・やってられっかいってのが現場の本音

by internalmedicine | 2009-01-09 09:36 | 運動系  

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