女性でも心拍がリスク要因

心拍と寿命の関係をテーマにするとき

いつも思い出す、1992年発行の当時のベストセラー
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「時間は体重の1/4乗に比例する」というおおよその関係が成り立つ。心周期(心臓が打つ時間間隔)や呼吸周期のような生理現象の周期もそうだし、懐胎期間や成獣になるまでの時間、寿命のような、一生に関わる時間も、ほぼ体重の1/4乗に比例する。大きいものほど時間がかかり、体重が10倍なら時間は1.8倍長くなるという関係である。


人間という一動物種内でも同じと仮定すれば、心拍数が速いほど寿命が短い?



前向きコホート研究で、129135名の閉経後女性、平均7.8(SD 16)年 フォローアップ
主要アウトカム測定は臨床的心血管イベント

Resting heart rate as a low tech predictor of coronary events in women: prospective cohort study
BMJ 2009;338:b219
2281が心筋梗塞・冠動脈疾患死、1877名が卒中
安静時心拍と心血管イベントの多因子補正後相関評価
高安静時心拍は独立して冠動脈イベントと関連
(ハザード比 1.26, 95% 信頼区間 1.11 ~ 1.42 for 最高 [>76 拍/分] v 最低5分位 [≤62 拍/]; P=0.001)
しかし、卒中とは相関認めず

心拍と冠動脈イベントの相関は白人と他の民族群とに有意差はなく (P for interaction=0.45) 、糖尿病有無でも有意差はない (相互関係 P =0.31)
しかし、ベースライン50-64歳女性で65-79歳女性より強い相関である(相互関係 P =0.009)


安静時心拍は、自律神経系のトーンの指標であり、男性でも独立した冠動脈イベントの予測因子である(Biol Psychol 2007;74:224-42.、Am Heart J 1987;113:1489-94.J Hypertens 1997;15:3-17Am J Hypertens 2006;19:796-800)。いままで、女性ではその総監は弱いか、認められていなかった。例外としてアフリカ系アメリカ人女性のNational Health And Nutrition Examination Survey(Am Heart J. 1991 Jan;121(1 Pt 1):172-7.)だけ。

高交感神経トーンは、subclinicalな心血管疾患のマーカーとして役割を果たし、血圧、糖代謝、血清脂質のような既知のリスク要因に影響を与える可能性がある。
うつや不安が自律神経への影響(Psychosom Med 2008;70:328-37.、Eur Heart J 2008;29:1110-7.)、さらに冠動脈イベントに影響を与える(Am J Cardiol 2003;92:901-6)が、心拍解析や心血管リスクの解析がなされてなかった。


男性に比べ、心拍の影響度が一定してなかったのは、一つの可能性として、” chronotropic insufficiency”が高齢女性に多く、冠動脈イベントへの信頼性が損なわれた可能性がある。

さらに、ハザード比は最高5分位のみで増加することから、閾値仮説が生じる可能性もある。
すなわち、この文献によると、76/分という数字になる。

by internalmedicine | 2009-02-06 08:44 | 動脈硬化/循環器

 

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