臨床ガイドラインは、エビデンスレベルの低い推奨が多くなってきている

診療ガイドラインでは、、エビデンスに基づくって事で、通常、”エビデンスのレベル分類”と”推奨度の分類”の記載がある。

たとえば、
ACC/AHA ガイドラインについて

エビデンス・レベルは、
* Level of evidence A: recommendation based on evidence from multiple randomized trials or meta-analyses
* Level of evidence B: recommendation based on evidence from a single randomized trial or nonrandomized studies
* Level of evidence C: recommendation based on expert opinion, case studies, or standards of care.


推奨の強さは、研究データの相対的強弱ばかりでなく、リスク・ベネフィットの相対的重要性を加味されている
* Class I: conditions for which there is evidence and/or general agreement that a given procedure or treatment is useful and effective
* Class II: conditions for which there is conflicting evidence and/or a divergence of opinion about the usefulness/efficacy of a procedure or treatment
* Class IIa: weight of evidence/opinion is in favor of usefulness/efficacy
* Class IIb: usefulness/efficacy is less well established by evidence/opinion
* Class III: conditions for which there is evidence and/or general agreement that the procedure/treatment is not useful/effective and in some cases may be harmful.


ACC/AHAガイドラインで、推奨強度分布とその根拠となるべきエビデンスレベルの分布を調査


Scientific Evidence Underlying the ACC/AHA Clinical Practice Guidelines
JAMA. 2009;301(8):831-841.
【データ抽出・データ源】 ACC/AHA practice guidelines(1984-2008年9月)をACC Science と Quality Divisionの職員により抽出
7196の推奨を含む53のガイドライン22トピックス

【データ抽出】 推奨数と、推奨クラス(I,II,III)とエビデンスレベル(A,B,C)の分布を調査
2008年9月時点での、ガイドラインのサブセットを初回と現行の推奨の変化として評価し、現行版のエビデンスレベルのパターンも評価

【結果】 2008年9月までに少なくとも1回は改訂もしくはアップデートされたガイドラインのうち
推奨数は、初版 1330 → 現行版 1973 と +48% 増加

特に、class II 推奨の大幅な増大が見られた


エビデンスレベルが報告されている、16の現行ガイドラインについて、エビデンス Aと分類されているのは、2711のうちの、314の推奨のみ(比率 中央値 11%)

一方、エビデンス Cと分類されているのは、1246(中央値 48%)であった。


エビデンスのレベルは、ガイドラインのカテゴリー(疾患、介入、診断)毎に有意にばらつきがあり、個々のガイドライン毎にもばらつきがある。

エビデンス A レベルの推奨は主に、class Iに集中するが、
1305のclass I推奨のうちの245(中央値 19%)のみがエビデンス Aであった

【結論】 現行ACC/AHA診療ガイドライン推奨は主に低レベルのエビデンスとエキスパートの意見に基づき作られている。
エビデンスの結論づけできてない部分の推奨比率が増加している。
この所見は、ガイドライン執筆プロセスを改善させる必要性が注目され、診療ガイドラインを導くエビデンス形成を広げる必要がある



臨床ガイドライン自体が、臨床治験に基づくエビデンスに基づく記載なら、話は簡単だろう。だが、臨床ガイドラインとは、特異的な患者の状況に応じて適切な診療ができるよう、医師の意思決定を手助けするための系統的に作られたステートメントである。科学的エビデンスと実地的な推奨の乖離が存在する。
エビデンスに基づくという原理原則に従えば、エビデンスレベルが低いのに推奨強度が強いというのが多すぎるのはやはり変。

個人執筆が本体で、形だけの会合で形成されるガイドラインは、客観性が乏しくなり、ほとんど、個人提示の診療指針とかわらないものさえ、見受けられる。そういうガイドラインは、なんらかの外的圧力に影響されることもあるだろう。臨床ガイドライン作成上の倫理を含めた規範が必要と思うし、議論過程もガラス張りにすべき。

by internalmedicine | 2009-02-25 10:42 | 動脈硬化/循環器  

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