今のところHDL介入治療の確たるベネフィット認めず・・・治療指標側面では当面LDLが一義的目標?
2009年 02月 27日
善玉コレステロールと名付けられた、このコレステロール・・・あまりに中身が多様すぎて、治療効果も一様にはいかないのがその理由のひとつか?
torcetrapib(CETP阻害剤治験:torcetrapib ・・・むなしい治験発表? 2007年 03月 27日)はHDL増加させたが、エコー上の冠動脈内動脈硬化量を改善せず^、ILLUMINATEトライアルでは超過死亡増加があり、これはたぶんにアルドステロン濃度増加による血圧増加作用によるものと説明されている。もう一つの仮説として、この阻害剤が、HDLコレステロールの機能障害を起こさせ、pro-inflammatory作用から催動脈硬化作用を示したというもの元来、HDLコレステロール粒子はサイズ、密度、組成、機能などばらつきがあり、そのため、動脈硬化への影響もばらつく。薬剤はHDL機能へ影響を与える。
48種類の脂質系薬剤や食事がHDLコレステロールに影響を与える。たとえば、最近のデータでは、低脂肪、高線維食、運動との併用で、pro-inflammatoryからanti-inflammatoryなHDLコレステロールに変化させることが示されている。
HDLコレステロールの機能測定は炎症、oxidation、、monocyte chemotaxis、nitric oxide production、 endothelial function、thrombosisなど様々なされている。しかし、HDLコレステロール測定における信頼性・利用性の高い検査が今後必要であろう。
Association between change in high density lipoprotein cholesterol and cardiovascular disease morbidity and mortality: systematic review and meta-regression analysis
BMJ 2009;338:b92, doi: 10.1136/bmj.b92 (Published 16 February 2009)
【目的】
脂質治療介入ランダム化トライアルにおける、LDLコレステロールや薬物分類補正後HDLコレステロールと総死亡、冠動脈精神疾患死、冠動脈イベント(冠動脈死・非致死的心筋梗塞)の関連を検討。
【デザイン】ランダム化対照トライアルのシステミック・レビューとメタアナリシス
【データソース】Medline, Embase, Central, CINAHL, and AMED to October 2006 supplemented by contact with experts in the field.
【研究選択】 2名チームの、レビューアーが、独立して、HDLコレステロールと死亡率や心筋梗塞を独立した治療群で検討し、少なくとも6ヶ月フォローされた心血管リスク減少のための脂質改善介入試験のランダム化トライアルの適格基準を決定
【結果】 299310名の心血管イベントリスクにある被験者を含む108のランダム化トライアルのメタ回帰解析
LDLコレステロール値の補正による全ての解析で、治療によるHDL値の変化と冠動脈疾患死、冠動脈イベント、全死亡のリスク比に相関はみられなかった。
全てのトライアルにて、すべてのアウトカムにおける、HDLコレステロールの変化によりその変化はなかった (<1%) 。
LDLとHDL指数の変化は全てのアウトカムへの影響において、LDLコレステロール単独の変化によるもの凌駕できず、アウトカムの変動を説明することは不可能であった。
HDLコレステロール・薬剤種類補正後LDLコレステロール 10 mg/dl(0.26 mmol/l)減少あたり
・冠動脈性疾患死 7.2%(95% 信頼区間 3.1% - 11%; P=0.001)
・冠動脈疾患イベント 7.1%(4.5% - 9.8%; P<0.001)
・総死亡 4.4%(1.6% - 7.2%; P=0.002)
【結論】 利用可能なデータによると、循環中HDL増加毎に単純に冠動脈性心血管イベント・冠動脈疾患死・全死亡のリスク減少を示唆することはない。この結果、現在のところ、LDLコレステロールの減少を脂質治療介入において一義的目標とすべき
LDL/HDL比など両指標の組み合わせの比較で、この論文への反論がなされることは目に見えているが、HDLへの介入に関して重みがうすれた印象はのこす。
by internalmedicine | 2009-02-27 09:09 | 動脈硬化/循環器