ホルモン補充療法推進に懸命な産経:日産婦と日本更年期医学会指針記事
2009年 04月 03日
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偏った医療情報を広めようとする産経・NHK:ホルモン補充療法・インフルエンザ予防 2009年 03月 07日
だが、この指針の改定は、野放図となっていたホルモン補充療法適用に警告を与え、適用制限をやや明らかにした指針としか私には思えないのだが、推進者にとっては、“光”なのだろうか?
もちろん、ホルモン補充療法すべてが悪ということではない。だが、利益性が有害性を上回るというエビデンスがはっきり出ていないのに、解決したごとく、指針を発表・報道するとしたら、その行為の有害性は明白である。有益性が有害性を上回るグループが抽出されているかどうか、そして、そのグループで実際にエビデンスレベルの高い長期検討がなされているか・・・と問えば、この学会の方々も真正面から答えられまい。
ホルモン補充療法に光 学会が診療指針発表 リスクより大きい効果 (1/2ページ, 2/2ページ)
2009.4.2 23:01
同会の三羽(みわ)良枝理事長は「HRTは更年期女性の生活の質の向上にも有効。しかし、医師によって理解と対応に格差があった。指針ができることで、女性も安心してHRTを受けやすくなる」と歓迎する。
HRT再評価の流れを受け、日産婦と日本更年期医学会は2年前から合同で指針づくりに取り組み始めた。海外の論文や研究結果などHRTに関する科学的根拠のある情報を収集、専門家の意見も踏まえ、今年2月に最終案をまとめた。
指針では、期待される効果として、血管運動神経症状(ほてり、発汗など)▽骨粗鬆(こつそしょう)症の予防・治療▽更年期の抑鬱(よくうつ)症状の改善-など9項目を挙げた。一方、乳がん▽子宮内膜がん▽卵巣がん▽冠動脈疾患-など10項目の有害事象の可能性を指摘。乳がん、冠動脈疾患などの既往症のある患者については、「禁忌(タブー)症例」として注意を喚起した。
その上で、60歳以上の女性に初めて投与する場合には慎重に行うこと、投与期間が5年以上に及ぶ場合は乳がんのチェックを徹底すること-などを盛り込んだ。
彼らの主張する、新たに加わったエビデンスは、「Health related quality of life と psychological wellbeing 測定(女性健康アンケート調査)」(WISDOM(BMJ 2008;337:a1190, doi: 10.1136/bmj.a1190 (Published 21 August 2008)))が主で、これは心血管リスクや発がんリスクを真正面から検討したものではない。リスクに関するエビデンスはWHI以降それを凌駕する知見はないはず。
この時期に、WHIを無視したor軽視した印象を一般に与える新聞・放送は、非常にharmfulな行為なのだ。
各国ガイドライン
http://www.gfmer.ch/Guidelines/Menopause_osteoporosis/Menopause_hormone_replacement_therapy.htm
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これをみるとわかるが、今回の学会の指針は、独自なものでもなく、横並びの翻訳指針に過ぎない。日本で大規模リサーチが行われていない以上、それもしかたないのだし・・・
一般的なHRTの流れは・・・
NGC:http://www.guideline.gov/summary/summary.aspx?view_id=1&doc_id=13312#s23
Menopause and Hormone Therapy(HT): Collaborative Decision-Making and Management
(http://www.guideline.gov/algorithm/6756/NGC-6756.gif)
by internalmedicine | 2009-04-03 08:09 | 動脈硬化/循環器