禁煙を目的とする減煙治療のためのニコチン補助療法

現在健保適用下の禁煙補助治療は、ある日突然禁煙を強いるもので、有効性も確立している。
だが、市販のニコチン補充療法薬である、ニコチン貼付薬・ニコチンガムにしても、その利用者の誤解もあり、禁煙と同時に使用するということは現実的には少ないのではないか?

突然の禁煙を意図せず、徐々に喫煙機会を減らし、最終的に減煙・禁煙を目標とするためのニコチン補充療法の効果をシステマティック・レビューにて検討した報告

喫煙は疾患や早死にの元であり、発展途上国も、先進国も同様で世界的な問題で、禁煙により多くの有害状況を減弱できる。しかし、英国人の半数が毎年禁煙を試みているが、成功は2-3%である。
この理由の一つは、禁煙の試みの成功率の低さにあり、計画化されていない禁煙トライが多く、有効な禁煙方法がなされていないことにある。ニコチン補充療法(NHR)が広く用いられており、標準的方法であるNational Institute for Health and Clinical Excellence(www.statistics.gov.uk/downloads/theme_health/Smoking2005.pdf.)は、ある日突然禁煙をさせ、NRTなどの使用を推奨している。
いつかはやめようと思っている喫煙者が70%で、次月やめようとしている喫煙者は12%に過ぎず、故に、即禁煙の意図をもつ対象者はきわめて少ない
・・・という次第。

イギリスでは、NRTとして、ガム、吸入、lozengeがライセンス供与され、即禁煙できない、あるいは希望しない人たちに広まっている。

突然禁煙を開始する方法でなく、よりマイルドに、喫煙機会を減らしたり禁煙を促進するために使うニコチン補助療法は、“nicotine assisted reduction to stop"と記載され、同様に、”cut down then stop"、 cut down to stop"、“cut down to quit”と呼ばれる。



Effectiveness and safety of nicotine replacement therapy assisted reduction to stop smoking: systematic review and meta-analysis
BMJ 2009;338:b1024, doi: 10.1136/bmj.b1024 (Published 2 April 2009)
【目的】禁煙補助ニコチン補充療法の有効性・安全性決定

【デザイン】 Systematic review of randomised controlled trials.

【データ源】 Cochrane Library, Medline, Embase, CINAHL, PsychINFO, Science Citation Index, registries of ongoing trials, reference lists, the drug company that sponsored most of the trials, and clinical experts.

【レビュー方法】適用対象研究は出版・未出版RCTで、短期的に禁煙宣言していない喫煙者を対象とし、動機づけサポートの有無を問わない、ニコチン補充療法を、プラセボ、非治療・他の薬物治療、動機づけサポートを受けてる対照比較で、禁煙率報告されたもの
2つのreviewerが独立して適用クライテリア検討。一人がstudy qualityとデータ抽出を行い、もう一人のreviewerがこの課程をチェックする。
プライマリアウトカムは、6ヶ月間治療開始からの禁煙維持であり、他のアウトカム亜hフォローアップ終了時での禁煙・喫煙減少であり、副事象である。

【データ作成】 7つのプラセボ対照ランダム化トライアルが含まれ、4つのNRTガム、2つの吸入NRT、1つの自由選択トライアル。これらは、セカンダリアウトカムとしての禁煙の減少研究である。
トライアル被験者総数は、2767名の喫煙者で、6-18ヶ月間のNRTで、12-26ヶ月継続続いた。
NRTを6.75%が6ヶ月禁煙継続で、プラセボの2倍 (相対リスク (fixed effects) 2.06, 95% 信頼区間 1.34 to 3.15; (random effects) 1.99, 1.01 - 3.91; 5トライアル).

NNTは29

他のすべての禁煙・減煙アウトカムは有意にプラセボよりNRTで良好

副事象イベントの統計学的に有意な差異はなし(死亡, オッズ比 1.00, 95% 信頼区間 0.25 - 4.02; 重大副事象イベント, 1.16, 0.79 - 1.50; 吐気(NRTで頻繁のため除外)以外の副事象による治療中断 1.25, 0.64 - 2.51) (8.7% v 5.3%; オッズ比 1.69, 95% 信頼区間 1.21 - 2.36)

【結論】 利用できるトライアル結果にて、NRTは喫煙中止意欲のない、試みることのできない喫煙者に禁煙維持するには有効的な介入方法である。
しかし、エビデンスの多くが、規則的な行動的サポートやモニタリングのトライアルも基づくもので、定期的接触無しのNRTが有効かどうかは不明である。



NNT 29 と、かなり効率が悪いようだが、確かに効果はあるようだ。ただ、無駄が多いのも事実。
公的保険負担じゃないのでOTC治療薬に対して文句は言えないが、きちんとした動機づけと定期的フォローアップで禁煙成功率をあげることができるのだから、公的になんらかの方策を考えるべきではないのか?

by internalmedicine | 2009-04-04 10:11 | 呼吸器系  

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