介護保険発足のおさらい

ほぼ連日、マスコミで、“介護保険”の問題点が連日、報道されている。この制度はもともと新たなる国民への財源負担創出が主であり、決して統一した理念でなされたものではないし、“走りながら考える”制度であり、矛盾が大量に出現するのは必然なのである。各種団体・組織の意見や考えがこの制度をごちゃごちゃにしていった。

介護保険法に基づく介護保険制度は、2000年(平成12年)4月1日から施行された。

この介護保険の発足当時に話をもどすと、高齢化社会に対する公的負担の見直し・・・すなわち、“措置にするか、公的保険にするか”が主眼であった。当時の政府の新たなる財源確保の道として、保険制度による新たなる財源確保という側面が大きく、副次的効果として、新たな事業の創出・従来の医療法人や福祉法人以外の新規事業者参入・インフラ整備による建設業などの産業促進などがあげられた。

負の側面は、元厚生事務次官、岡光序治(のぶはる)にかかわる汚職<厚生省・汚職事件(彩福祉グループ贈収賄事件)>、コムスン・グッドウィルグループのスキャンダル<nikkei BP net コムスン事件>などが後年問題となった


他の制度と同様に、制度開始まで、長い助走の段階があった。(あくまで私感だが、政府官僚たちの思いとは別に、))現実を直視しない北欧理想化思想が、一部煽動するマスコミとともに、市民にあり、これが、この制度開始に大きな流れになったような気がする。“なぜ日本にだけ寝たきりがいるのだ”・・・これは医療制度が悪いに違いないという方向に煽動していった人たちがいた。
大熊由紀子などはいつからこの制度にかかわったのだろう?
『「寝たきり老人」のいる国いない国――真の豊かさへの挑戦』 大熊 由紀子 19900920 ぶどう社,171p

(参考:大熊氏に思う・・・マスコミ出身者の放言の責任と立場 2008年 09月 12日
栃木県医師会抗議 ; 大熊氏の根拠無き医者への誹謗中傷 2008年 12月 11日


医療施設・長期入院がねたきり老人の発生源であるという、かれらの意見が、一方的に、採用されつつ、コスト削減のための“在宅医療推進”が官僚の思惑に合致し・・・日本の実態と乖離した制度が強化されていく。


激しい医師・医療機関バッシングのころで、医療福祉などの専門家の意見を軽視する一方で、財界の意見が国の医療福祉施策に重きをなす流れがこの頃から決定的となっていく。


「高齢者保健福祉推進十ケ年戦略」(ゴールドプラン)

(厚生白書(平成5年版):http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpaz199301/b0028.html)



平成4年、厚生省は「介護費用に関する関係課長会議」(例の岡光が中心)

平成5年2月末に大臣官房審議官クラス以上が集まった最高幹部会議がありこれを契機に新介護システムの省内検討チーム

給付の物差し設定:高齢者データセット(MDS)およびRAPS,RUGⅢの有効性の検討

財源、制度論を優先させたい経済団体側と、サービス供給論を重視する医療、福祉側

平成7年7月4日に政府の社会保障制度審議会が公的介護保険制度の創設を勧告
(参考:http://www.tokai.or.jp/syuzenziclinic/Kaigohok.html



“介護保険制度を走りながらつくってきた経緯”(http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/shingi/syakai/txt/1022-1.txt)を制度造った人たち自身が認めている。


保険者となった市区町村、各保険事業者(福祉法人、医療法人など)、従業者たち・・・、なにより利用者および家族に、この“走りながら考える”深慮無き施策に振り回されている。

by internalmedicine | 2009-04-27 09:05 | 医療一般  

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