厚労省の愚?:化学物質過敏症保健病名へ?
2009年 06月 12日
”multiple"というところがポイントなのに・・・何らかの別のエビデンスでも出現したのか?
”毎日新聞”なので、ソースとして信用できないが、厚労省が愚の選択を行った?
化学物質過敏症:10月から病名登録、70万人救済に道
2009年6月12日 2時30分
http://mainichi.jp/select/today/news/20090612k0000m040141000c.html(魚拓)
さしあたり、以前のブログ記載を再掲しておく
内科開業医のお勉強日記 : 化学物質過敏症 2005年6月13日
・化学物質過敏症というのは、MCSでないというなら、日本独特の概念である。
・MCSであるとすれば、日本語訳を正しく変更すべきであり、この疾患概念の必要性、心身的な問題からとらえる必要性がある。疾患概念が確立してないわけだから、治療専門家も存在し得ないはずである。治療者は独りよがりにならないようにしなければならないはず・・・もっとも、テレビで見た夫婦は病院に行けない・・・とのことであり、治療者が居るとは思えなかったが・・
(医療との分断を自らが選択する可能性が高い・・・ので、専門医と名乗るのはその分断を防止するのには役立つのかもしれない)
内科開業医のお勉強日記 : 化学物質過敏症、その原典:MCS ・・・ 2007年10月3日
化学物質過敏症、Multiple chemical sensitivities(MCS)が日常生活で遭遇する多くの物質に対する悪作用をもたらす病態への病名として提唱されたものである。MCSは、ロン・G・ランドルフ(Theron G. Randolph, M.D. 1906-1995)が提唱、日本では北里大学の石川哲が“化学物質過敏症”と名付けたとされるようだ。
この“chemical:化学物質”の対象は、有機溶媒、殺虫剤、ペイント、新しいカーペット、合成洗剤、新しい生地、建物材料、他多くのものをくむのである。身体所見や生化学異常を伴わない主観的症状のみ診断されるもの(Ann Int Med 15 July 1993 Volume 119 Issue 2 Pages 163-164)
MCSが掲載されるのは2000年以降の文献は少なく、1998年のAFP誌(Vol. 58/No. 3 (September 1, 1998) )がまとまった記載の最後の方で臨床的特徴を記載するほどのデータがないMCS症状を有する多くの患者は女性(85-90%)で、30-50歳に多く存在する。叙述的、疫学的記載は多くなく不明。頻度・罹患率なども不明。プライマリケアでのMCSは報告されておらず、報告されたのは特異的な状況での選別された患者のみである。
・・・・・
American Academy of Allergy and Immunology、 the American Medical Association、 the California Medical Association, the American College of Physicians、 the International Society of Regulatory Toxicology and Pharmacologyといった学会からその診断名称を拒否されており、以下の存在そのものに対する否定的ステートメントが次々に出されているのである。
American Medical Association Council on Scientific Affairs. Clinical ecology. JAMA 1992;268:3465-7..
American College of Physicians. Clinical ecology. Ann Intern Med 1989;111:168-78.
American College of Occupational and Environmental Medicine. Position statement. Multiple chemical sensitivities, environmental tobacco smoke, and indoor air quality. Retrieved March 1998 from the World Wide Web: http://www. acoem.org/paprguid/papers/mcs.htm.
Executive Committee of the American Academy of Allergy and Immunology. Clinical ecology. J Allergy Clin Immunol 1986;78:269-71
内科開業医のお勉強日記 : Acute Irritant-induced Asthma: 刺激に誘発されたぜん息 2009-05-14
主観的所見のみで診断せざるえないMCS or CS・・・このような病名を厚労省は認めたわけだが、これに付随して様々なソーシャルコストが出現する。「衆愚政治」という意味でのポピュリズム大臣も良い部分はあったが、今後に多大な悪影響を及ぼす判断を安直に行ってしまった。
医学を超越して疾患が定着してしまうことの危険性をこの大臣はわかっているのだろうか?
by internalmedicine | 2009-06-12 07:13 | くそ役人