音楽は心理学的影響を凌駕する生理学的変化をもたらす:様々な疾患への治療応用可!

”音楽療法”ってのが、以前から、卒中リハビリテーションなどで応用されている。様々なリハビリテーションに応用可能なはず・・・と思う人も多かっただろう。

Dynamic Interactions Between Musical, Cardiovascular, and Cerebral Rhythms in Humans
Bernardi et al. Circulation.2009; 0: CIRCULATIONAHA.108.806174


イタリアの研究者たちは、血流・呼吸数が音楽と同期し、音楽が一日で血圧コントロール、リハビリテーションへの治療ツールとなり得ることを”Circulation"という雑誌で示した。

以前の報告(Heart. 2006 Apr;92(4):445-52)で、速いテンポの音楽の結果呼吸数、心拍、血圧の増加が見られ、音楽が止まると、呼吸数、心拍数、血圧は下がり、時に最初より低下する。よりゆったりした音楽は心拍減少をもたらすということを見いだした。

この発見を発展させて、研究者たちは、crescendoに盛り上げると、やや感情的な高ぶりを示し、decrescendoにいたるとrelaxationを示す。
音楽のcrescendoは次第にボリュームを上げて、decrescendはボリュームを下げるという介入をした。音楽により持続的、ダイナミックに、時により広がりを見せて、心血管系への変化をもたらす。情緒により心血管系に変化をもたらすばかりでなく、反対に、心血管系の変化が情緒に影響をあたえる、2方向性の可能性があると著者ら。

被験者は、年齢・性別をマッチさせた24名の健康白人で、12名は実績あるシンガー(9名女性)で、12名は音楽トレーニング未経験の被験者(7名女性)で24-26歳女性。

ヘッドフォーンをフィットさせ、心電図(ECG)、血圧、脳動脈血流、呼吸、皮下血管の縮まりのモニターを行った。

クラシックミュージックの5つのランダムトラック(Beethoven’s Ninth Symphony; an aria from Puccini’s Turandot; a Bach cantata (BMW 169); Va Pensiero from Nabucco; Libiam Nei Lieti Calici from La Traviata)を二分の無音時間をたもち演奏


所見としては・・・
・どのcrescendoも、皮下血管の縮まりをもたらし、血圧・心拍・呼吸振幅を増加させる。
どの音楽トラックも影響の程度は音楽の特性の変化に比例する
・無音時間において、変化は減少し、皮下血管拡張、心拍、血圧の減少顕著、音楽とちがい、無音は心拍、他の因子を減少させ、リラクセーションを意味する。
・10秒程度の音楽フレーズ、たとえば、“Va Pensiero” や “Libiam Nei Lieti Calici"で使われるような、芯パックリズムと同期するリズムで心血管コントロールに影響を与える。
・音楽特性(crescendoかdecrescendoか)は心血管系、呼吸系システムにより継続的な影響があり、音楽がオペラのような、強調だらけのとき顕著となる。


音楽をリハビリテーション医学でどのように用いることができるかを理解するための知見が増えてきた。

以前の研究からも、音楽がストレス軽減し、運動パフォーマンスを促進し、神経学的障害を有する場合にその運動スキル改善促進するという報告があり、Bernardiは音楽が様々な疾患の治療に用いられるかもしれないとし、疼痛・負荷的呼吸の閾値増加にyり運動継続を助ける効果も示している。

早いテンポ、遅いテンポの音楽(同じ曲内でもcrescendoやdecrescendoのある場合)はより効果的になる可能性がある。音楽は生理学的変化をもたらしその影響は心理的影響をも凌駕する可能性がある。自律神経機能のmodulationは身体のsensationに、意識レベルに到達するまで影響をもたらす。少なくとも上位脳機能への持続的刺激をもたらし、音楽による身体生理学的個体内同期化は"sense of sharing”を強化するのに役立つ。

これら全ては、音楽療法の有効性が卒中のような病態の治療にとどまらずリハビリテーション医学全般に広がることを意味するだろう。

この研究の限界としては、24名という被験者の少なさ、と、年齢、教育、民族性が同一であったことであり、高齢者では反応が違うだろうと思われ、音楽への態度の違いで反応が異なる可能性がある。


脳血流にも影響を与え、脳のリハビリテーションに有効かも
Dynamic Interactions Between Musical, Cardiovascular, and Cerebral Rhythms in Humans
Bernardi et al. Circulation.2009; 0: CIRCULATIONAHA.108.806174



Youtube:
Beethoven Symphony No.9 - Bernstein 1989 (part 1)
Pavarotti - Nessun Dorma - Turandot, Puccini
Bach - Organ Sinfonia from Cantata No. 169
Va Pensiero dal Nabucco di G.Verdi - Coro Città di Riccione
Verdi La Traviata Brindisi Libiam ne' lieti calici



一般の老人たちになじみのある演歌や軍歌、童謡などに、適した音楽があるだろうか?・・・あるいはなじみのない上記音楽でも同様の効果があるのだろうか?

by internalmedicine | 2009-06-23 10:04 | 運動系  

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