CRPは遺伝的causal linkはない・・・・バイオマーカー再考必要
2009年 07月 01日
理想的なバイオマーカーは、リスク要素であり、かつ、リスク評価とともに、個別特異的治療に役立つものであろうと、Svati H. Shah氏(Duke University)と、James A. de Lemos)University of Texas Southwestern Medical Center)は述べている。
”JUPITER:非高脂血症・hsCRP高値例でのスタチン使用で、心血管イベント予防効果あり( 2008-11-11 )”の解釈に関して、明快な解説がなかなかなされない。宿題が投げかかけられている(”JUPITERトライアルをいかに解釈するか?” 2008-11-20)。
バイオマーカーの意義について考慮するチャンスでもあるというのがお偉いさんたちの意見。
Elliottらの、CRP値に関わるCRP遺伝子変異と冠動脈疾患リスク相関についての報告
genome-wide association study・** (ゲノム全体の解析により多因子疾患の原因を推定する方法) ゲノムワイド関連研究genome-wide association studyにおいて、いくつかのcommonな遺伝子多型がCRP値と相関することを確認したが、mendelian randomization study(参考)で、CRP遺伝子へにと冠動脈疾患リスクについて相関は認めなかった。
Genetic Loci Associated With C-Reactive Protein Levels and Risk of Coronary Heart Disease
JAMA. 2009;302(1):37-48.
C-reactive protein (CRP)、 N-terminal pro-B-type natriuretic peptide (N-BNP)、Cystatin Cなどのマーカーは、予測因子としては、他の通常のものにくらべてほとんどインパクトがない。causal genetic linkもみとめられない。
CRPの有用性は、炎症性バイオマーカーとしてupbeatされていたが、遺伝子的影響がないことは、CRP値のみ変容しようとする戦略に誤りがあると公述のエディトリアル氏たちは述べている。しかし、JUPITERトライアルで行われたスタチンや他の予防治療を右受けた患者のCRPの有用性を除外できるわけではないとも述べている。JUPITERトライアルでは、CRP感受性ベースのスタチン処方がなされ、通常のリスクレベルのあきらかな健康対象者で劇的に心血管イベントを減少させた。最近のサブ解析ではCRPを独立したアウトカム予測因子としているが、JUPITERトライアルの研究者Paul M. Ridkerは新しいバイオマーカーの興味を持っていない。最終的なCRPが非原因的であるとしても、コレステロールや他のリスクが無い場合でも、測定されており、臨床的にもしCRPが増加しても、より長生き、心血管イベント・卒中イベントが少なくなるのなら、遺伝的causal linkを議論しても意味のないことであると述べている
Melanderらは、従来のリスク要因に、新規・従来のバイオマーカーを利用することで、低リスク群における、偶発性の心血管リスク予測をもたらす有用性を報告した。
著者らは、いくつかのバイオマーカーは将来の心血管イベント予測に役立つことを示した。しかし、これらのバイオマーカーを用いたリスク層別化は、従来のリスク要因多読に基づく分類スキームに比較して大してその予測改善はない。予測改善効果は、主に、心血管イベント生じそうにない、中等度リスク対象者の同定に対してであった。
Novel and Conventional Biomarkers for Prediction of Incident Cardiovascular Events in the Community
JAMA. 2009;302(1):49-57.
上記2つの報告に対して、エディトリアルでは、Shahとde Lemosが、バイオマーカーの役割について解説している。
by internalmedicine | 2009-07-01 10:20 | 動脈硬化/循環器