今更でも必要な・・・老年者へのインフルエンザワクチンの死亡率軽減効果の報告
2009年 07月 01日
Impact of influenza vaccination on mortality risk among the elderly
Eur Respir J 2009 34: 56-62.
多変量解析寄与因子補正後
propensity score matching ・propensity score regression analysisにて
インフルエンザワクチンは死亡率リスク オッズ比:0.58 (95% 信頼区間l (CI) 0.46–0.72)、 0.56 (95% CI 0.44–0.71) 、 0.56 (95% CI 0.45–0.69)
非測定補正後(夏期期間対照)、インフルエンザワクチンと死亡リスクはオッズ比 0.69 (95% CI 0.52–0.92)である。
Impact of influenza vaccination on seasonal mortality in the US elderly population.
Arch Intern Med. 2005 Feb 14;165(3):265-72.
何をいまさらというだろうが・・・
多くの高収入のある国のインフルエンザワクチン施策は、少なくとも65歳以上の住民をターゲットにインフルエンザ死亡減少こころみを行っている。しかし、この戦略の有効性は議論下にある。プラセボ対照化トライアルでは若年者で有効性がルヶ、老人でのトライアルは少なく、特に、インフルエンザ死亡の3/4をしめる70歳のおいてはなおさらその検討が少なかった。最近の超過死亡研究では、15%から65%と増加したワクチンカバー率となっても、インフルエンザ関連死の減少を確認できない。奇異的だが、これらの研究ではインフルエンザによる冬の死亡が約5%寄与という報告だが、多くのコホート研究では冬の総死亡50%減少と報告され、推定インフルエンザ死亡より10バイモのベネフィットが報告されている。より新しい研究により選択バイアスの非補正が示されている。この文献ではresidual biasのようなものを検知するanalytical frameworkを提案している
脆弱な選択バイアス、全原因死亡のような非特異的なエンドポイントの使用ことで、コホート研究のワクチンの大げさな効果ベネフィットがしめされることとなったと結論
ワクチンプログラムから老人がえら得る死亡率ベネフィットの強度に関するエビデンスベースは現在不十分である。老人へのインフルエンザワクチンの死亡率ベネフィットはいまだ議論の余地がある。
Lancet Infect Dis. 2007 Oct;7(10):658-66.
・・・以上のような、老人のワクチン死亡率軽減効果に対する反論がでている。
また、インフルエンザワクチンの製薬メーカーの関与を指摘している報告もあるが、結果的には、結果に影響を与えていない(BMJ 2009;338:b354, doi: 10.1136/bmj.b354 (Published 12 February 2009))とされた。
後顧的研究が多く、ランダム化臨床トライアルがなされるまで議論が続くだろうが、倫理的・科学的議論のみで老人へのインフルエンザ施策の疑問への答えがでるだろうとこの論文掲載時の編者は述べている。様々なインフルエンザワクチンの種類のガチンコ対決ではワクチン有効性への結論は出ない。
結局、インフルエンザでの死亡例をアウトカムにする場合それを検知するにはかなり大きなトライアルが必要で、ウィルスの流行周期に関しても考慮が必要となる。
為政者たちが自信をもってワクチン施策ができるために、初期のころのトライアル者たちがそのような堅実な研究をしておけば良かったのだが・・・いまでは倫理的な問題が、これを縛り付けてしまっている。現状では、より堅実なエビデンスを重ねるしかあるまい。
by internalmedicine | 2009-07-01 12:04 | インフルエンザ