結核診療ガイドライン(日本結核病学会)

結核診療ガイドライン (単行本) 発売日: 2009/06(amazon.co.jp)

・・・結核病学会に入って20数年だが、せめて結核診療している人や学会員には、厚労省が税金使って配布すべきだろうとおもうのだが・・・


たとえば、結核患者の発生届け出に関する代表的な誤解
1.患者本人(小児などの場合は保護者)の了解を得ないで保健所に届けるのは、医師の守秘義務違反に該当するのではないかという誤解→警報などの守秘義務よりも、感染症法による届け出義務が優先される。感染症の蔓延を防止し国民の健康と安全を確保するという公衆衛生上の利益を優先させるとの考え方から、法律で届け出義務を課しているものであり、医師の守秘義務違反には該当しない。同様の考えからから、個人情報保護法との関連でも、感染症法による患者発生届については、「個人情報の第三者提供の制限」の例外規定(同法第23条一項)が適用される。
2.患者の死亡後に結核と判明した例、あるいは結核と診断した直後(治療開始前)に死亡した例は、届け出が不要という誤解→感染症法では、死亡後の死体検案における結核診断例においても届け出を義務づけている(感染症法12条4)
・・・とくに前者は誤解が多いのではないだろうか?


まずは検査分野に関して・・・抜き書き

喀痰結核菌検査の臨床上の注意点
a. 喀痰の採取
・うがいしないで採取の方がよい((NTMの混入の危険性)
・排出困難例ネブライザーの試み(3%程度の食塩水誘発)
・窓をあけて(陰圧の部屋が準備できない場合)
・胃液採取はのこるが、患者の苦痛を考慮
・TTA
・気管支鏡検査は職員感染に注意

b.初回診断時は3日居合いだ(3回)の喀痰採取にて塗抹・培養
・健保にて1回は喀痰直接法可能
・2-3日混合も精度確保のために勧める
喀痰塗抹陽性の場合は、培養にて結核菌確認と感受性検査を行う
・5%以上血液混入では偽陰性の可能性

d.菌陰性時の対応
・細胞内寄生性なので、他の一般呼吸器感染と異なり菌数が少ないことを念頭に置く
・女性・小児から喀痰採取困難が多い
・他の疾患の可能性が少ない場合、治癒病巣とは考えにくい一定の広がりをもつ病巣の場合、厚壁空洞の場合、あるいはtree-in-bud patternなどの場合には早期に治療開始すべき事がある


ハイリスク者(相対リスク)
・AIDS 170.3
・HIV感染者 110
・珪肺 30
・頭頸部の癌 16
・血友病 9.4
・免疫抑制薬治療 11.9
・人工透析 10-15
・低体重 2.2-4
・多重喫煙 2.2
・胃切除 5
・空腸・回腸バイパス 2.7-6.3
・糖尿病 3
・やせ形の人 3


ハイリスクグループ
結核を発病するリスクの高い者、あるいは発病して重症化するリスクの高い者、①~④は基幹線率が高く、結核発病の危険が高い者、⑤~⑨は感染を受けた場合、発病しやすく、また、発病すると重症化しやすい者
①高齢者収容施設入所者およびデイケアに通院する者
②ホームレス、特定結核高土間延々地域の住民
③入国後3年以内の外国人、日本語学校に通学する者
④結核治癒所見を持っている者
⑤HIV感染者
⑥珪肺、血液悪性腫瘍尾、頭頚部癌、人工透析などの患者、低栄養者
⑦コントロール不良な糖尿病患者
⑧免疫抑制薬、長期ステロイド、抗がん剤、TNF阻害薬などで治療中の者
⑨BCG接種歴のない乳幼児(0~4歳)



デンジャーグループ
結核発病率は高くないが、もし発病すれば若年者や抵抗力の弱い者に結核を感染させる恐れが高い者
①高校以下の教職員
②医療保険施設職員
③福祉施設職員
④幼稚園・保育園・塾の教師など




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ガフキーになれてるので新しい分類はなじめない私用
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ツベルクリン反応(ツ反)検査(日本結核病学会予防委員会:今後のツベルクリン反応検査の暫定的技術的基準. 結核81:387-391. 2006)
ツベルクリン反応検査成績( 月 日注射、  月 日測定)
発赤 mm 硬結  mm
副反応 二重発赤、 リンパ管炎、 水疱、 出血、 壊死
(該当するものに○で囲む


※国際的基準から逸脱した”発赤判定”重視のツ反指標だが、今回も、
今後の反応評価の方法として発赤、硬結を測定する方式にいずれか一方に寄ること年、両者を併記している
というあいまいなまま・・・

判定基準(日本結核病学会予防委員会:今後のツベルクリン反応検査の暫定的技術的基準. 結核81:387-391. 2006)としては
・BCG接種歴有り+ AND 接触歴あり+:硬結15mm以上 または 発赤30mm以上
・BCG接種歴有り+ AND 接触歴あり-:硬結20mm以上 または 発赤40mm以上
・BCG接種歴有り- AND 接触歴あり+:硬結5mm以上 または 発赤15mm以上
・BCG接種歴有り- AND 接触歴あり-:硬結15mm以上 または 発赤30mm以上


クォンティフェロンRTB-2G
・適応年齢:5歳以下では知見不十分、12歳未満でも低めに出ることを考慮:乳幼児・学童はツ反を優先、中学生以上はQFTを優先(必要に応じてツ反を併用)して感染判断を行う
・過去の感染価、最近の感染かを区別不能
・高齢者など結核基幹線率の高い者を対象にする場合は、”陽性、即、感染あり”とはいえない!ことに注意を
・30-49歳の日本人では約95%が結核菌未感染として49歳までとしている。ただ、50歳以上でも結核発病の高リスク因子を有している場合は、QFT検査を実施することも勧められている(相変わらず、曖昧な表現・・・尤度とかを提示してくれたら良かったのに・・・)

測定結果の判定
(IFNE-INFN)あるいは(IFNC-INFN)
・0.35IU/mL以上:陽性:結核感染を疑う
・0.1IU/mL以上~0.35IU/mL未満:感染リスクの度合いを考慮し、総合的に判定する
・0.1IU/mL未満:陰性:結核感染してない



接触者検診におけるQFTの用い方
QFT:陽性→X線撮影→活動性結核なら化学療法、活動性結核所見無ければ潜在性結核感染症治療
QFT:陰性→8週後QFT再検→陽性ならX線撮影→陽性なら活動性結核として、陰性なら潜在性結核感染症治療を 
QFT:陰性→⑧週後QFT再検→陰性なら終了

by internalmedicine | 2009-07-01 15:02 | 感染症  

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